中学生向け!科学的探究の第一歩
探究へようこそ
自由研究は、「作業」ではありません。「探究」です。知識をただ集めるのではなく、自ら問いを立て、データを集め、論理的に分析し、結論を導き出します。この科学的な思考プロセスこそが、未来へと導く最強の武器となります。さあ、本物の探究を始めてみましょう。
テーマ1:地域のハザードマップと地形の関係を探る
【探究課題】地域の災害リスク(ハザード)は、地形とどのような論理的関係性を持っているのか?
【探究の進め方】
- 自治体が公開している「洪水」「土砂災害」などのハザードマップと、国土地理院の地形図(Webサイトで閲覧可能)を入手する。
- ハザードマップ上で、浸水想定区域や土砂災害警戒区域などのリスクが高い場所を特定する。
- 地形図と重ね合わせ、それらの場所がどのような地形(例:複数の川が合流する地点、谷の出口、急な崖の下など)に対応しているかを分析する。
- なぜその地形が、特定の災害リスクと結びつくのかを、理科で学んだ知識(例:浸食、運搬、堆積の作用)を用いて論理的に考察する。
発展させよう!
地域の古い地図(古地図)や、地名の由来を調べてみよう。「蛇崩(じゃくずれ)」や「沼」といった地名は、その土地が過去に経験した災害の歴史を物語っていることがある。現在のハザードマップと、土地に残された過去の記憶とを比較することで、より深い防災考察につなげることができるよ。
テーマ2:月の定時観測と軌道分析
【探究課題】月の満ち欠けと、見える時刻・方角の間には、どのような規則性があるのか?
【探究の進め方】
- 約1ヶ月間、毎日同じ時刻(例:午後8時)に月を観測し、「月の形(スケッチ)」「見えた方角」「空の高さ(角度)」を記録する。見えない日も「見えない」と記録することが重要。
- 記録したデータを、日付を横軸にして、月の形と位置の変化がわかるように一覧表や図にまとめる。
- データから、「月の形が満ちていくにつれて、見える位置はだんだん東へずれていく」「上弦の月は夕方に南の空に見える」といった規則性を見つけ出す。
- なぜそのような規則性が生まれるのかを、地球の「自転」と月の「公転」モデルを使って、図解で説明することに挑戦する。
発展させよう!
国立天文台のウェブサイトなどで、同じ期間の月の出・南中・月の入りの時刻データを調べて、自分の観測結果と比較してみよう。自分の観測から導き出したルールが、実際のデータと一致したときの感動は、科学の醍醐味だよ!
テーマ3:土砂災害の事例分析とリスク評価
【探究課題】近年発生した土砂災害は、どのような地形的・気象的要因が引き金となって発生したのか?
【探究の進め方】
- 新聞やインターネットで、近年国内で発生した土砂災害(がけ崩れ、土石流など)の事例を、複数調査する。
- それぞれの事例について、「発生場所の地形(国土地理院の地図で確認)」「土地利用(森林か、住宅地か)」「発生直前の降水量(気象庁のデータ)」などを、客観的なデータとして収集する。
- 収集した複数の事例データを比較し、土砂災害が発生しやすい場所の共通点(例:特定の傾斜角度、谷の形状、先行降雨量など)を分析・考察する。
発展させよう!
分析して見えてきた「土砂災害が起きやすい条件」を、自分の住む地域の地形図にあてはめてみよう。そして、自分だけの「オリジナル土砂災害リスクマップ」を作成してみる。ハザードマップに指定されていないけれど、地形的に注意が必要な場所が見つかるかもしれない。
テーマ4:土壌の性質と水の浸透・保水力比較実験
【探究課題】土壌の種類(砂質土、粘性土など)は、水の浸透速度と保水能力に、どのように影響するのか?
【探究の進め方】
- 底に穴を開けた同じ大きさのペットボトルを複数用意し、それぞれに、同量の「砂」「園芸用の土」「田んぼの土(粘土質)」などを入れる。
- 【浸透実験】各ボトルに、同量の水を同時に注ぎ、水が完全にしみこむまでの時間と、下から水が出てくるまでの時間を測定する。
- 【保水力実験】水が完全に出なくなったあと、ボトル全体の重さをはかり、実験前の重さを引くことで、それぞれの土がどれくらいの水を保持しているかを定量的に比較する。
発展させよう!
この実験結果は、なぜ砂漠では水がすぐに地下に消え、田んぼでは水がたまりやすいのか、という疑問に答えるヒントになる。さらに、都市部で地面がアスファルトに覆われると、なぜ洪水が起きやすくなるのか(都市型水害)という問題にも、この実験の考え方を応用して考察することができるよ。