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高校生向け探究テーマ例:君だけの地学探究の道を拓く

コレクト 探究の流儀

「総合的な探究の時間」は、未知の問いに挑む戦いです。ここでは、その闘い方を示す6つの「道」を提示します。単なる知識の確認ではなく、自ら問いを立て、データを収集・分析し、論理的に考察し、そして最終的に自分なりの「解」を創造すること。そのプロセスこそが、君という知性を、次のステージへと進化させましょう。

道1:地震のメカニズムを地形から読み解く道

【リサーチクエスチョン例】活断層の分布と、過去の地震が形成した「変動地形」との間には、どのような相関関係が見られるか?

【アプローチ】

  1. 国土地理院の地形図や空中写真、活断層データベースを使い、特定の地域の地形的特徴(断層崖、撓曲など)と、既知の活断層の位置を重ね合わせる。
  2. 過去の地震の震源分布と、変動地形との関係性を分析し、「〇〇断層帯の活動は、△△という特徴的な地形を形成している」という仮説を立てる。
  3. GIS(地理情報システム)などを活用し、分析結果を「地震地形リスクマップ」として視覚化し、地域の潜在的な地震ハザードを論理的に考察する。
ひらめいたちさまる 探究キーワード

活断層、変動地形、断層崖、撓曲(とうきょく)、隆起・沈降、応力場、ひずみ集中帯、GIS

道2:地域の地盤データと液状化リスクを検証する道

【リサーチクエスチョン例】自分の住む地域の地盤データ(ボーリング柱状図)を基に、簡易計算式を用いて液状化リスクを定量的に評価し、ハザードマップの妥当性を検証できるか?

【アプローチ】

  1. 自治体や国のデータベースから、地域のボーリングデータ(N値、土質、地下水位など)を入手する。
  2. データから、液状化しやすいとされる「飽和した砂質土層」の深さと厚さを特定する。
  3. 液状化判定式(FL値法など)を学習し、想定される地震動に対して、各地点の液状化リスクを定量的に算出する。
  4. 算出した結果と、公表されている液状化ハザードマップを比較し、その一致点や差異について、地盤工学的な視点から考察する。
ひらめいたちさまる 探究キーワード

液状化、N値、地下水位、飽和砂層、FL値、ボーリング柱状図、オープンデータ

道3:気象データを分析し、自分だけの「微気象モデル」を作る道

【リサーチクエスチョン例】特定の微気象環境下(例:アスファルト上と緑地上)で、気温・湿度の時系列変化はどのように異なり、その要因を説明する簡易的な数理モデルを構築できるか?

【アプローチ】

  1. 温湿度センサーなどを使い、条件の異なる複数地点で、一定期間、気象データを自動収集する(データロガーの使用を推奨)。
  2. 収集した時系列データを、表計算ソフトやプログラミング言語(Pythonなど)を用いてグラフ化し、日変動や場所による差異を視覚的に分析する。
  3. 日射量や地面の材質(アルベド、熱容量)といった物理パラメータを考慮し、「気温の変化は、日射量に比例し、地面からの放射冷却に反比例する」といった仮説に基づき、現象を説明する簡易的な数式(モデル)の構築を試みる。
ひらめいたちさまる 探究キーワード

ヒートアイランド現象、熱収支、放射冷却、アルベド、時系列データ解析、相関分析、回帰分析

道4:年代測定の数式を駆使し、仮想地層の歴史を解き明かす道

【リサーチクエスチョン例】放射性同位体の半減期の数式モデルを理解し、それを用いて、与えられた仮想の地質サンプル(親核種と娘核種の比率)の絶対年代を算出できるか?

【アプローチ】

  1. 放射性崩壊が指数関数に従うこと、そして半減期の概念を数式( N(t) = N₀ * (1/2)^(t/T) )レベルで理解する。
  2. 特定の放射性同位体(炭素14など)について、その半減期を調べる。
  3. 「ある化石に含まれる炭素14の割合が、現在の生物の1/8になっていた」といった仮想の問題を設定する。
  4. 半減期の数式を対数などを用いて変形し、年代 t を求める計算を、自力で実行する。
  5. 複数の異なる年代のサンプルを計算し、地層の整合・不整合といった関係と、絶対年代との関係性を考察する。
ひらめいたちさまる 探究キーワード

放射性同位体、半減期、崩壊定数、絶対年代、相対年代、指数関数、対数関数

道5:地盤データから建築物の耐震性と防災計画を提案する道

【リサーチクエスチョン例】地域の地盤データから、地震動が増幅しやすい「軟弱地盤」のエリアを特定し、そのリスクを軽減するための具体的な防災計画を提案できるか?

【アプローチ】

  1. 公開されている地質図や微地形分類図から、自分の住む地域に分布する地盤の種類(沖積低地、台地など)をマッピングする。
  2. 各々の地盤の特性と、一般的な地震時の揺れやすさ(地震動増幅率)の関係を、先行研究や専門書で調査する。
  3. 特定した軟弱地盤エリアと、既存の避-難経路や避難場所を重ね合わせ、地震時に危険が予想される箇所がないかを分析する。
  4. 分析結果に基づき、「揺れやすい地域では、家具の固定を特に徹底する」「この避難経路は液状化の危険があるため、代替経路を設定すべき」といった、具体的な防災上の提言をレポートとしてまとめる。
ひらめいたちさまる 探究キーワード

地震動増幅、共振、固有周期、軟弱地盤、微地形分類図、耐震・免震・制震、リスクアセスメント

道6:地学教育の衰退原因を探り、その再興策を提案する道

【リサーチクエスチョン例】高校生が理科の選択科目として「地学」を敬遠する根本原因は何か、そして、その課題を解決するための魅力的な教育コンテンツを具体的に提案できるか?

【アプローチ】

  1. 他校の生徒や、大学生などを対象に、「なぜ地学を選択しなかったか(あるいは、選択したか)」について、アンケートやインタビュー調査を実施する。
  2. 調査結果を分析し、「受験で使いにくい」「内容が暗記ばかりで面白くなさそう」といった、地学離れの根本原因に関する仮説を立てる。
  3. その仮説に対する解決策として、具体的な「新しい地学教育コンテンツ」を企画する。(例:防災と直結する探究型学習プログラム、VRを使った火山内部の体験教材、地学の面白さを伝えるYouTubeチャンネルの企画書など)
  4. 企画したコンテンツのプロトタイプを作成し、その教育的効果や魅力を論理的にプレゼンテーションする。
ひらめいたちさまる 探究キーワード

学習指導要領、STEAM教育、キャリア教育、大学入試改革、アンケート調査、インタビュー調査