大人の本気の実験
再現性と定量性への挑戦
ようこそ。このラボは、単なる現象の再現を目的としているものではありません。自ら実験系を設計し、客観的なデータを取得し、数理モデルと比較検討します。誤差の原因を考察し、より真実に近い値へと迫る、その知的な格闘のプロセスこそが、科学の本質です。
1. 自作震度計による地震動の定量的観測
【探究課題】身近な材料で作成した簡易的な「震度計(感震センサー)」は、気象庁が発表する震度情報と、どの程度の相関性を持つのか? また、地盤の固さが異なる複数の地点に設置することで、地震動の増幅を定量的に観測できるか?
【実験系の設計】
- 振り子の原理を応用した、簡易的な感震センサーを自作する。(例:容器に吊るしたおもりが、一定以上の揺れで壁面の導電性テープに接触し、通電することでLEDが点灯・記録される装置)
- マイコン(Arduino, Raspberry Piなど)と加速度センサー(MPU-6050など)を組み合わせ、より本格的な地震計を製作する。
- 製作した装置を、地盤が固いと想定される場所(丘の上など)と、軟らかいと想定される場所(川沿いの低地など)の、それぞれ同じ条件下(屋内1階など)に設置する。
- 長期間設置し、実際に地震が発生した際のセンサーの応答(LEDの点灯回数や、加速度の最大値など)を記録し、気象庁発表の震度データと比較・分析する。
考察のヒント
同じ地震でも、設置場所によって揺れの大きさに差は出たかな? それはなぜだろう(地盤の固有周期と共振など)? 気象庁の震度と、自作装置の応答には、どのような関係式(近似式)を見いだせるのかな? 装置の感度を調整するには、どのパラメータ(振り子の長さ、おもりの重さなど)を変更すべきなのかな?
2. 放射線量計を用いた土壌・岩石のバックグラウンド測定
【探究課題】自然界には、常に微量の放射線(自然放射線)が存在する。地域や、地質(岩石の種類)の違いによって、空間放射線量率(バックグラウンドレベル)に有意な差はみられるのか?
【実験系の設計】
- 市販の携帯型放射線量計(ガイガーカウンターなど)を用意する。
- 測定地点を複数選定する。その際、地質図などを参考に、明らかに岩石の種類が異なる地点(例:花こう岩が分布する山、堆積岩でできた平野)を選ぶ。
- 各測定地点で、同じ条件下(地上から1mの高さなど)で、一定時間(数分間)、放射線量を複数回測定し、平均値と標準偏差を算出する。
- 天候(雨の日はラドン娘核種の影響で数値が上昇しやすい)などの外的要因も記録し、測定値のばらつきの原因を考察する。
考察のヒント
西日本の花こう岩地帯と、関東平野の堆積層地帯で、測定値に系統的な差は見られた? それはなんでだろう(花こう岩には、カリウム40などの放射性同位体が多く含まれるため)? 測定値のばらつき(誤差)の主な原因は何かなぁ? より信頼性の高いデータを取得するためには、どのような改善(測定時間の延長、測定点の増加など)が考えられる?