指導案:地層から過去の環境変動を推理する
本指導案の設計思想
本単元の学習目標は、「れき・砂・泥の層は、それぞれ〇〇な環境で堆積する」という知識を暗記することではありません。「なぜ、流れが速いと大き礫が、おだやかだと細かい泥が堆積するのか」という物理法則(5年次既習)を基に、提示された地層柱状図というデータから、過去にその場所で何が起きたのか(海進/海退)を、生徒自身が論理的に推理・説明できるようになることです。
授業展開案(50分)
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導入(5分):既習事項の確認
- 5年次に学習した「流れる水の働き(侵食・運搬・堆積)」を想起させる。
- 問いかけ:「川の流れの速さと、運ばれる土砂の大きさには、どのような関係がありましたか?」
- 「流れが速いほど、大きいものを運べる」という基本原理をクラス全体で確認する。
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展開①(15分):堆積環境と粒度の関係性の構築
- 海岸から沖合にかけての模式図を提示し、「A:波打ち際」「B:少し沖」「C:遠い沖合」の3地点で、流れの速さがどうなるかを問いかける。
- それぞれの地点に、れき・砂・泥のどれが堆積しやすいかを、生徒に考えさせ、理由とともに発表させる。
- 結論の共有:「れき岩→岸に近い」「砂岩→少し沖」「泥岩→遠い沖合」という、地層の岩石と堆積環境との論理的な関係性を導き出す。
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展開②(20分):地層柱状図の推理(本時の核心)
- 以下の2つの架空の地層柱状図を提示する。
【資料1】下から「れき岩→砂岩→泥岩」の順で重なる地層
【資料2】下から「泥岩→砂岩→れき岩」の順で重なる地層 - 問いかけ:「地層は下の層ほど古いというルール(地層累重の法則)を使うと、資料1と資料2の場所では、それぞれ過去にどのような環境の変化があったと推理できますか?」
- 個人またはグループで考察させ、結論とその論理的な理由(「昔は岸に近かったが、だんだん沖合になっていった。なぜなら、粒が下から上へ細かくなっているから」など)を発表させる。
- 海進・海退という用語を導入し、生徒たちの推理が、実際の地質学的な現象に対応していることを示す。
- 以下の2つの架空の地層柱状図を提示する。
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まとめ(10分):化石による推理の補強と応用
- 示相化石の概念を導入する。(例:「もし資料1の泥岩層からサンゴの化石が出たら、どんなことが追加でわかりますか?」)
- 問いかけ:「地層を調べることは、地球の歴史を知る上で、どのような意味を持つでしょうか?」
- 本時の学びを振り返り、地層が過去の環境変動の記録であることを確認し、授業を終える。