指導案:地震の初期微動から震源距離を求める (高1)
本指導案の設計思想
本単元の学習目標は、公式を暗記して計算問題を解くことではありません。「なぜ、初期微動継続時間が長いほど、震源距離が遠いのか」というP波とS波の速度差に起因する現象を、一次関数のグラフ(走時曲線)として視覚的・論理的に理解することです。これにより、公式は暗記するものではなく、グラフから導き出せる当然の帰結であることを生徒自身に体感させます。
授業展開案(50分)
- 導入(10分):P波とS波の性質の確認と問い
- P波とS波の性質(速さ、揺れの大きさ)を復習する。
- 問いかけ:「震源から離れるほど、カタカタという揺れ(初期微動)と、グラグラという揺れ(主要動)の間の時間は、長くなるでしょうか、短くなるでしょうか、それとも変わらないでしょうか? 理由もあわせて予想してください。」
- 生徒に予想を立てさせ、グループで議論させる。
- 展開①(15分):走時曲線の作図と読み取り
- 「P波は秒速8km、S波は秒速4kmで進む」という単純なモデルを設定する。
- 横軸に「震源からの距離(km)」、縦軸に「地震発生からの時間(秒)」をとった方眼紙を配布する。
- 距離が80km、160km、240kmの地点に、P波とS波がそれぞれ何秒で到着するかを計算させ、グラフ上にプロットさせる。
- プロットした点を結ぶことで、P波とS波の走時曲線(2本の比例のグラフ)が完成することを確認する。
- 展開②(15分):初期微動継続時間と距離の関係性の発見
- 作成したグラフ上で、「縦軸の2本のグラフの差」が何を表しているかを問いかける(初期微動継続時間)。
- 問いかけ:「グラフを見ると、震源からの距離が遠くなるほど、初期微動継続時間はどうなっていますか? そこに、どのような規則性(比例関係)が見られますか?」
- グラフから、「距離が80kmごとに、初期微動継続時間は10秒ずつ増える」という具体的な比例関係を生徒自身に発見させる。
- まとめ(10分):公式の導出と応用
- 発見した比例関係から、「震源からの距離 ≒ 8 × 初期微動継続時間」という大森公式(簡易式)を導き出す。
- 問いかけ:「この法則を使えば、緊急地震速報は、なぜ大きな揺れが来る前に危険を知らせることができるのでしょうか?」
- 本時の学びが、実際の防災技術の根幹となっていることを示し、授業を終える。