中3理科⑥:自然環境の調査と環境保全
この記事で学ぶこと
わたしたちの暮らしは、空気、水、土、そしてたくさんの生き物たちといった、豊かな自然環境によって支えられている。でも、その大切な環境が、今、わたしたち人間の活動によって、少しずつ姿を変え始めているんだ。この単元では、地域の自然環境を科学的に調査する方法と、未来の地球のために、わたしたちができる「環境保全」について考えていくよ。
地域の自然を調査する
自分たちの住む地域の自然環境が、今どのような状態にあるのかを、科学的に知ることはとても大切だ。そのための調査には、さまざまな方法がある。
- 植生調査:どのような植物が、どのくらい生えているかを調べる。植物は環境の変化に敏感なため、その地域の環境を知るための良い指標になる。
- 水質調査:川や池の水の透明度や、pH(酸性・アルカリ性の度合い)、汚れの指標となるCOD(化学的酸素要求量)などを調べる。
- 生物調査:特定の地域に住む動物や昆虫、鳥などを観察し、種類や数を記録する。指標生物(その生物がいることで、環境の状態がわかる生き物)を調べることも有効だ。
ちさまるといっしょに考えよう!
きれいな川にしか住めない生き物(例えばサワガニやカゲロウの幼虫)が見つかったら、その川はどんな状態だと言えるかな? 逆に、汚れた水でも平気な生き物(例えばアメリカザリガニ)ばかりが見つかったら…?
その通り! 生き物は、その場所の環境を映し出す「鏡」のような存在なんだ。指標生物を調べることで、水質調査の機械がなくても、その場所の水がきれいかどうかを、ある程度推測することができるんだね。
人間の活動が自然環境にあたえる影響
わたしたちの便利な暮らしは、ときに、意図せず自然環境に大きな影響をあたえてしまうことがある。
- 大気汚染:工場や自動車から出る排出ガスが、酸性雨や光化学スモッグの原因となる。
- 水質汚濁:家庭からの生活排水や、工場からの排水が、川や海の水を汚し、生き物が住めなくなってしまうことがある。
- 森林伐採と開発:宅地開発などで森林を切り開くことで、多くの生物のすみかが奪われたり、土砂災害のリスクが高まったりする。
- 外来生物:もともとその地域にいなかったのに、人間の手によって持ちこまれた生物(外来生物)が、もとからいた在来種のすみかや食べ物をうばい、生態系のバランスを崩してしまうことがある。
コレクトの論理 de 解説:地球温暖化
現在、人類が直面している最も深刻な環境問題の一つが「地球温暖化」です。これは、石油や石炭などの化石燃料を燃やすことで、大気中の二酸化炭素の濃度が高まり、地球全体の平均気温が上昇している現象です。二酸化炭素は、太陽からの熱を宇宙に逃がしにくくする「温室効果ガス」の代表であり、このバランスが崩れることで、異常気象の増加や、海面の上昇、生態系の変化など、さまざまな問題が引き起こされると予測されています。
未来のための環境保全
豊かな自然環境を、未来の世代へと引きついでいくために、わたしたちができることは何だろうか。この活動を「環境保全」という。国や自治体による法律やルールの整備はもちろん、わたしたち一人ひとりの、日々の小さな行動の積み重ねが、大きな力になるんだ。
わたしたちにできること
- 省エネルギー:使わない電気を消す、移動には公共交通機関や自転車を使うなど、二酸化炭素の排出を減らす工夫をする。
- 3Rの実践:ごみを減らす(Reduce)、くり返し使う(Reuse)、資源として再利用する(Recycle)。
- 地域の自然に関心を持つ:地域の清掃活動に参加したり、どんな生き物が住んでいるかを調べたりすることから始めよう。
チャレンジ問題
「外来生物」が、もともとその地域にいた「在来種」にどのような影響をあたえ、生態系全体のバランスを崩してしまう危険性があるか。具体的な例をあげて説明しなさい。
こたえを見てみる
【解答例】
もともとその地域にいなかった、アメリカザリガニのような強い外来生物が持ちこまれると、以下のような問題が起きる。
① もともといたメダカや水生昆虫などの在来種を食べてしまい、その数を大きく減らしてしまう(捕食)。
② 在来種と同じエサやすみかをめぐって争い、在来種を追い出してしまう(競合)。
その結果、もともと成り立っていた「食べる・食べられる」の関係(食物網)のバランスが崩れ、特定の生物だけが増えすぎたり、逆に絶滅してしまったりして、生態系全体が単純で不安定なものになってしまう危険性がある。