中3理科⑦:自然の恵みと災害
この記事で学ぶこと
火山、地震、雨、川の流れ…。これまで学んできた地球の活動は、わたしたちに温泉や豊かな大地といった「恵み」をあたえてくれる一方で、ときには人の命をおびやかす「災害」となっておそいかかってくる。この単元では、自然現象の二面性を理解し、科学の知識を使って災害から命を守る「防災」について、深く考えていくよ。中学理科の、最後の授業だ。
自然の恵みと、その源
わたしたちの生活は、地球からもたらされる、さまざまな恵みの上に成り立っている。
- 大地からの恵み:火山の活動は、わたしたちに温泉という癒やしや、地熱発電というクリーンなエネルギーをあたえてくれる。また、火山灰が積もってできた土壌は、水はけが良く、農業に適していることが多い。
- 水からの恵み:川の流れは、水力発電というエネルギーを生み出し、わたしたちの生活に欠かせない水道水や農業用水を供給してくれる。
- 気象からの恵み:太陽の光や風は、太陽光発電や風力発電といった、再生可能エネルギーの源となる。
恵みの裏側にある、災害のリスク
しかし、これらの恵みの源である自然現象は、ひとたびその規模が大きくなると、深刻な災害を引き起こす。恵みと災害は、いわば「表裏一体」の関係にあるんだ。
- 火山災害:噴火による溶岩流、火砕流、大きな噴石、火山灰の降下など。
- 地震災害:建物の倒壊、津波、液状化、土砂くずれなど。
- 気象災害:台風や集中豪雨による洪水、土砂災害、高潮。また、大雪や竜巻、干ばつなど。
ちさまるといっしょに考えよう!
自然災害は、人間の力で止めることはできない。じゃあ、わたしたちは、ただ災害が起きるのを待っているしかないのかな…? 何か、わたしたちにできることはないんだろうか?
コレクトの最終講義:科学的防災
その問いこそ、防災の出発点です。自然現象そのものを止めることはできなくとも、科学の知識を活用することで、その被害を最小限に食い止める(減災する)ことは、十分に可能です。
そのために、わたしたちはまず**「ハザードマップ」**を確認し、自分たちの住む土地に、どのような災害のリスク(危険性)がひそんでいるのかを「知る」必要があります。そして、気象庁などが発表する**「警報」や「注意報」**といった防災気象情報の意味を正しく理解し、危険がせまったときには、ためらわずに**「避難」**という、最も論理的な行動をとらなければなりません。
これまで君たちが学んできた、火山や地震、気象のメカニズムに関する知識。それら全てが、ハザードマップや警報の意味を深く理解し、自らの命を守る判断を下すための、最強の武器となるのです。これこそが、我々の理念である**「知災(知ることから始める防災)」**の核心です。
中学理科で学んだ、防災にいきる知識
- 大地のつくり:断層や火山がどこにあるかを知ることは、地震や噴火のリスクを知ることにつながる。
- 天気の変化:低気圧や前線の動きを理解することは、大雨や台風の危険を予測することにつながる。
- 天体の動き:地球という星が、広大な宇宙の中で、奇跡的なバランスの上に成り立っていることを知る。
理科を学ぶことは、防災を学ぶこと。そして、地球を大切に思う心を育むことなんだね。
チャレンジ問題:最後の問い
君の住む市町村が発行している「洪水ハザードマップ」と「地震ハザードマップ」を、インターネットや役場で調べてみよう。
問1:君の家や学校は、洪水によって浸水する可能性のある区域に入っているか。
問2:大きな地震が起きたとき、君の住む地域で最も注意すべき危険(建物の倒壊、液状化、津波など)は何か。
問3:これらの情報をもとに、災害がおきる前に、君や君の家族ができる「備え」には、どのようなことがあるか。3つあげてみよう。
こたえの例を見てみる
【備えの例】
① 地域の避難場所と、そこへ向かう安全な避難経路を、家族みんなで確認しておく。
② 非常用の持ち出し袋(水、食料、懐中電灯など)を準備し、すぐに持ち出せる場所に置いておく。
③ 大きな地震にそなえて、家のタンスや本棚などの家具を、壁に固定しておく。