地学基礎④:火山
🌋1. 火山とは
火山(volcano)とは、地下のマグマが地表近くに噴き出してできた山や地形のことです。
- 火山の中心には火道(かどう)とよばれるマグマの通り道があり、地下深部のマグマだまりから上昇してきます。
- 地表に出てくるとき、溶岩(ようがん)・火山ガス・火山灰などを噴き出します。
🔥2. マグマと火山噴火
マグマ
マグマとは、地球内部の高温下で岩石が融けてできた、ドロドロとした高温の液体(溶融体)です。火山噴火によって地表に噴き出すと溶岩となります。
- マグマには様々な種類のガス(水蒸気、二酸化炭素、二酸化硫黄など)が溶け込んでいます。これらのガスがマグマの粘性や噴火の様式に大きく影響します。
マグマの分布
地球上のマグマのほとんどは、プレートの境界、特に沈み込み帯や中央海嶺で発生しています。また、一部はプレートの内部でも発生します(ホットスポット)。
【発展】マグマの発生
地球内部の岩石が融けてマグマが発生するには、主に以下の3つのメカニズムがあります。
- 減圧融解:マントルの岩石が、温度は高いままで圧力が低下することによって融解する現象。中央海嶺やホットスポットで起こります。
- 付加された水の作用による融解(含水鉱物の脱水融解):沈み込む海洋プレートが水を含んだ含水鉱物をマントル深部に運び込むと、その水が周囲のマントルの融点(融ける温度)を下げ、マグマが発生しやすくなります。沈み込み帯(日本列島のような場所)の火山の主要なマグマ発生メカニズムです。
- 温度上昇による融解:ホットプルームなど、異常に高温なマントルが上昇してくることで、周囲の岩石の温度が融点を超えて融解する現象。ホットスポットで起こります。
🏔3. 噴火の仕方と火山地形
火山の噴火のしかたや火山の形は、マグマの粘性と含まれるガスの量によって大きく異なります。
🔻 マグマの成分による分類
分類 | 二酸化ケイ素(SiO₂)含有量 | 粘性 | 噴火の特徴 | 火山の形 | 主な例 |
---|---|---|---|---|---|
玄武岩質マグマ | 少ない(約50%) | 低い(さらさら) | 穏やか(流れる) | 盾状火山 | キラウエア(ハワイ) |
安山岩質マグマ | 中間(約60%) | 中程度 | 普通(噴火あり) | 成層火山 | 富士山、桜島 |
流紋岩質マグマ | 多い(約70%以上) | 高い(ねばねば) | 激しい(爆発的) | 溶岩ドーム | 昭和新山、雲仙普賢岳 |
二酸化ケイ素(SiO₂)の含有量が多いほど、マグマの粘性が高くなり、爆発的な噴火を起こしやすくなります。
🌋 火山の種類(形態)
(1)盾状火山(たてじょうかざん)
- マグマ:玄武岩質
- 粘性が低く、溶岩が遠くまで流れる
- 形:傾斜がゆるやかな広がった山
- 例:マウナロア、キラウエア(ハワイ)
(2)成層火山(せいそうかざん)
- マグマ:安山岩質(中間)
- 火山灰と溶岩が層状に積み重なって形成
- 形:富士山型の円錐状
- 例:富士山、桜島、浅間山
(3)溶岩ドーム(ようがんドーム)
- マグマ:流紋岩質(粘性が高い)
- 地表近くに押し出されるが、流れずに山のように盛り上がる
- 爆発的噴火や火砕流の原因になる
- 例:雲仙普賢岳、昭和新山
🌍4. 火山の分布
火山活動は、プレートテクトニクスと密接に関係しています。
発生場所 | 原因 | 主な例 |
---|---|---|
海溝付近(沈み込み帯) | 海洋プレートが沈み込み、水を含んだ岩石が溶けてマグマが発生 | 日本列島、アリューシャン列島 |
中央海嶺(ちゅうおうかいれい) | プレートが広がる境界でマントルが上昇し、減圧融解でマグマが発生 | アイスランド、海底山脈 |
ホットスポット | プレートとは無関係に、マントルの深部から高温の柱(プルーム)が上昇 | ハワイ諸島、イエローストーン |
世界中の火山は、主にプレートの境界に沿って分布しています。特に、太平洋を取り囲むように分布する環太平洋火山帯(Ring of Fire)には、世界の活火山の約75%が集中しています。日本列島もこの火山帯の一部です。
🪨5. 火山噴出物の種類と特徴
火山から出てくる物質(火山噴出物)には以下のものがあります。
種類 | 説明 | 噴火の特徴 |
---|---|---|
溶岩 | 地表に出たマグマ | 地形を変える、灼熱 |
火山灰・火山礫 | マグマが粉砕されて細かくなったもの | 広範囲に降り積もる |
火山ガス | 水蒸気・二酸化硫黄など | 有毒、酸性雨の原因に |
火砕流 | 火山灰・軽石・ガスが高速で斜面を流れる | 非常に危険(高温・高速) |
火山泥流(ラハール) | 雨などと混ざった火山灰が流れる | 土石流のように破壊的 |
💎6. 火成岩・鉱物とその分類
火成岩
火成岩とは、マグマが冷え固まってできた岩石のことです。冷え固まる場所や速度によって、含まれる鉱物の結晶の大きさが異なります。
- 深成岩:マグマが地下深くでゆっくり冷え固まってできた岩石。結晶が大きく、肉眼で見分けられる(等粒状組織)。
- 火山岩:マグマが地表近くや地表で急激に冷え固まってできた岩石。結晶が小さく、ガラス質の部分(石基)の中に大きな結晶(斑晶)が散らばっている(斑状組織)。
分類 | 化学組成(SiO₂量) | 深成岩 | 火山岩 | 主な構成鉱物 |
---|---|---|---|---|
酸性岩 | 多い(約66%以上) | 花崗岩 | 流紋岩 | 石英、長石、黒雲母など |
中性岩 | 中間(約52~66%) | 閃緑岩 | 安山岩 | 長石、角閃石、輝石など | 塩基性岩 | 少ない(約45~52%) | 斑れい岩 | 玄武岩 | 輝石、カンラン石、斜長石など |
超塩基性岩 | 非常に少ない(約45%未満) | かんらん岩 | (対応する火山岩は稀) | カンラン石、輝石など |
※SiO₂の含有量が多いほど「酸性」、少ないほど「塩基性」と呼びます。
造岩鉱物
岩石を構成する主な鉱物を造岩鉱物と呼びます。火成岩は、マグマが冷え固まる過程で様々な鉱物が結晶化してできます。
- 有色鉱物:鉄やマグネシウムを多く含み、色が濃い鉱物(カンラン石、輝石、角閃石、黒雲母など)
- 無色鉱物:鉄やマグネシウムをあまり含まず、色が薄い鉱物(石英、長石(斜長石・正長石)など)
マグマが冷えるにつれて、特定の鉱物が結晶化していく順番(ボーエンの反応系列)があります。
🔄7. 岩石のサイクル
地球上の岩石は、火成岩、堆積岩、変成岩の3種類に分類され、それぞれが地球の活動によって形を変えながら循環しています。これを岩石のサイクルと呼びます。
- 火成岩の形成:マグマが冷え固まって火成岩ができます。
- 堆積岩の形成:火成岩や他の岩石が風化・侵食され、運ばれた砕屑物(堆積物)が堆積・固結して堆積岩ができます。
- 変成岩の形成:火成岩や堆積岩が、地下の高温・高圧、あるいはマグマの熱によって変成作用を受け、変成岩になります。
- 再融解:変成岩などがさらに地下深部に沈み込み、高温によって再びマグマとなり、このサイクルが繰り返されます。
プレートテクトニクスは、この岩石のサイクルを駆動する主要なメカニズムの一つです。
🚨8. 火山被害・火山災害・噴火予知と対策
火山被害(火山災害)
火山噴火は、私たちの生活に甚大な被害をもたらすことがあります。
- 溶岩流:ゆっくり流れるため人命被害は少ないが、建物やインフラを破壊する。
- 火砕流:高温のガスと火山灰・岩石が高速で流れ下り、非常に危険。避難が困難で、人命被害が大きい。
- 火山泥流:火山灰が雨水や雪解け水と混ざり、土石流のように流下。遠方まで到達し、家屋や農地に被害。
- 火山灰降下:広範囲に降り積もり、交通機関の麻痺、農作物への被害、健康被害などを引き起こす。
- 火山ガス:有毒ガス(二酸化硫黄、硫化水素など)が発生し、生命に危険を及ぼす。酸性雨の原因にもなる。
- 噴石:噴火の際、大きな岩石が飛散し、建物や人に被害を与える。
噴火予知と対策
火山災害を軽減するためには、噴火予知と適切な対策が不可欠です。
- 活火山:現在活動中または過去1万年以内に噴火した火山。日本には111の活火山があります。
- 火山観測:
- 地震計:マグマの上昇に伴う微小な地震活動を観測。
- 傾斜計・GPS:山体の膨張や収縮などの地殻変動を観測。
- ガス観測:火山ガスの種類や量の変化を観測。
- 熱観測:地表面温度や噴気孔の温度変化を観測。
- 火山防災マップの作成と周知:溶岩流、火砕流、火山泥流などの危険区域を明示し、避難経路や避難場所を事前に確認しておく。
- 避難計画の策定と訓練:住民や観光客の安全を確保するための迅速な避難体制を整備する。
- 情報提供:気象庁による噴火警報や警戒レベルの発表により、住民に注意喚起を行う。
受験チェックポイント ✅
分類 | 内容 |
---|---|
🔲マグマとは | 地下の岩石が融けた液体 |
🔲火山の形とマグマの性質 | 盾状(玄武岩質)/成層(安山岩質)/溶岩ドーム(流紋岩質) |
🔲SiO₂含有量と粘性 | SiO₂多い=粘性高い=爆発的 |
🔲火山活動とプレートの関係 | 海溝型火山/中央海嶺火山/ホットスポット火山 |
🔲火山噴出物の種類 | 溶岩/火山灰/火山ガス/火砕流/火山泥流/噴石など |
🔲火山の分布 | 環太平洋火山帯、中央海嶺、ホットスポット |
🔲マグマの発生メカニズム | 減圧融解、付加された水の作用による融解、温度上昇による融解 |
🔲火成岩の種類と組織 | 深成岩(等粒状組織)と火山岩(斑状組織)の違い |
🔲火成岩の化学組成と岩石名 | 酸性岩(花崗岩・流紋岩)/中性岩(閃緑岩・安山岩)/塩基性岩(斑れい岩・玄武岩)など |
🔲造岩鉱物の分類 | 有色鉱物と無色鉱物の代表例 |
🔲岩石のサイクル | 火成岩、堆積岩、変成岩が循環する様子 |
🔲火山災害の種類 | 溶岩流、火砕流、火山泥流、火山灰降下、火山ガス、噴石など |
🔲噴火予知と対策 | 火山観測(地震計、傾斜計など)、火山防災マップ、避難計画、情報提供 |