地学基礎②:地球の概観と構造
🌎1. 地球の形と大きさ
地球の形:完全な球ではない
地球は一見すると「球体」に見えますが、完全な球形(真球)ではなく、やや扁平(へんぺい)な楕円体(回転楕円体)です。地球に近い形をした回転楕円体を、「地球楕円体」といいます。
- 赤道半径:約6378 km
- 極半径:約6357 km
- 差:約21 km
- 扁平率:1/298
このように、赤道方向にふくらみ、極方向に少しつぶれた形をしています。これを「扁球(へんきゅう)」と呼びます。
これは、地球が自転(1日1回の回転)しているために生じる遠心力の影響です。
地球の重力と遠心力
地球は回転しているため、場所によって重力の強さが微妙に異なります。
- 赤道では重力が弱く、極では強い
→ 自転による遠心力が赤道で最大となるため。
ジオイドとは
地球の表面には山や谷があるため、形は複雑です。そこで、平均海水面の高さを基準にした「ジオイド」という概念を使います。
ジオイドは、重力の等しい仮想の海面の形で、地球の「真の形」に近いとされています。
図:地球楕円体(出典:Wikipedia)
受験チェックポイント ✅
チェック項目 | 内容 |
---|---|
🔲地球は回転楕円体か | 楕円体。赤道半径 > 極半径 |
🔲赤道と極の半径の差 | 約21 km |
🔲地球の形を表す用語 | 回転楕円体・扁球・ジオイド |
🔲重力が強いのはどこか | 極地方(遠心力が小さい) |
🌋2. 地球内部の層構造
地球の内部構造:3つの区分
地球の内部は、物質の性質や地震波の伝わり方から以下のように分けられます。
【化学組成】による分類(地球を「成分」で分ける)
層 | 深さの範囲 | 主な構成物質 |
---|---|---|
地殻(ちかく) | 約0~30 km | 花崗岩・玄武岩・堆積岩 |
マントル | 約30~2900 km | カンラン石などのかんらん岩 |
核(コア) | 約2900~6371 km | 鉄・ニッケルが主成分 |
- 地殻は地球の表面を覆う固い部分。大陸地殻と海洋地殻に分かれる。
- 大陸地殻:厚さ平均約30~50 km、花崗岩質で密度が小さい。山脈などで厚い部分がある。
- 海洋地殻:厚さ平均約5~10 km、玄武岩質で密度が大きい。
- マントルは地球の体積の大部分(約80%)を占める。
- 核(コア)は外核と内核に分かれ、主に金属からできている。
【物理的性質】による分類(地球を「性質」で分ける)
層 | 特徴 |
---|---|
リソスフェア(岩石圏) | 地殻+上部マントルの一部、プレートを構成 |
アセノスフェア(軟らかい層) | 上部マントルの一部、ゆっくり対流している |
メソスフェア(下部マントル) | 高温高圧でやや硬い |
外核(液体) | S波が通れない(液体である証拠) |
内核(固体) | 非常に高温・高圧で、鉄などが固体状態 |
🌎 3. 地震波からわかる地球内部
地震波にはP波(縦波)とS波(横波)があり、性質を活かして地球内部の構造が明らかになりました。
- P波:固体・液体・気体を通る(速い)
- S波:固体のみを通る(遅い)
→ 外核でS波が消失することから、外核は液体とわかる
→ P波の速度変化から、内核は固体であると推定される
モホ面(モホロビチッチ不連続面)
- 地殻とマントルの境界にある地震波速度の不連続面。
- 「モホ面」と呼ばれ、深さは大陸地殻で約30~50 km、海洋地殻で約5~10 km。
地球内部の温度
- 地球内部の温度は中心で約5000~6000℃。
- 深くなるほど高温になる(地温勾配:約25~30℃/km)
発展:アイソスタシー
アイソスタシーとは、地殻がその下のマントルの上で、浮力と重力の均衡を保ちながら浮いている状態を指します。ちょうど氷山が水に浮いているように、地殻はその厚さや密度に応じてマントルに沈み込んだり、浮き上がったりしています。
- 例えば、大陸地殻は海洋地殻よりも厚く、かつ密度が小さいため、深く根を張ってマントルに浮いています。山脈がある場所では地殻がより厚く、その下でマントルに深く沈み込むことでバランスが保たれています。
- 氷河が融解したり、大規模な侵食が起こったりすると、その地域の地殻は軽くなり、隆起することがあります(地殻の均衡運動)。
発展:走時曲線
走時曲線とは、地震が発生してから、地震波が観測地点に到達するまでの時間(走時)と、震源からの距離との関係を示したグラフです。地震波の速度は地球内部の物質の性質や密度によって変化するため、走時曲線を詳しく分析することで、地球内部の構造(不連続面の位置や深さ、物質の物性)を推定することができます。
- P波とS波では速度が異なるため、それぞれ異なる走時曲線を描きます。
- 地球内部に不連続面(例えばモホ面や核とマントルの境界)が存在すると、その面で地震波が屈折したり反射したりするため、走時曲線に折れ曲がり(キンク)が生じます。このキンクの位置から、不連続面の深さを割り出すことが可能です。
♻️ 4. 変成作用と変成岩
地殻を構成する岩石は、地下深くの高温・高圧環境や、マグマの熱などの影響を受けると、元の岩石とは異なる性質の岩石に変化することがあります。この変化を変成作用、変成作用を受けてできた岩石を変成岩と呼びます。
変成作用の種類
- 広域変成作用:広い範囲でプレートの沈み込みや大陸衝突などによる高圧・高温下で起こる変成作用。特定の圧力・温度条件で特徴的な変成鉱物や組織(片理・片麻状構造など)が形成されます。
- 接触変成作用(熱変成作用):マグマが周囲の岩石に貫入した際に、その熱によって周囲の岩石が変成する作用。比較的高温・低圧の環境で起こり、特定の変成鉱物(例:ホルンフェルス)が生成されます。
主な変成岩の種類と特徴
変成岩の種類 | 元の岩石(原岩) | 主な特徴 |
---|---|---|
粘板岩(ねんばんがん) | 泥岩、頁岩 | 板状に薄く割れる(スレート) |
千枚岩(せんまいがん) | 泥岩、頁岩、粘板岩 | 絹のような光沢があり、薄くはがれる |
結晶片岩(けっしょうへんがん) | 泥岩、頁岩、玄武岩、凝灰岩など | 縞状の片理が発達し、剥がれやすい。緑泥石や白雲母などを含む。 |
片麻岩(へんまがん) | 花崗岩、泥岩など | 黒っぽい鉱物と白っぽい鉱物が縞状に配列する片麻状構造を持つ。 |
大理石(だいりせき) | 石灰岩 | 再結晶した方解石の結晶が集まっており、光沢がある。 |
珪岩(けいがん) | 砂岩 | 石英が再結晶して固く緻密になった岩石。割れにくい。 |
ホルンフェルス | 泥岩、頁岩、玄武岩など | マグマの接触熱によってできた緻密で硬い岩石。特有の斑点が見られることもある。 |
変成岩の多くは、特定の方向への圧力(応力)を受けることで、鉱物が特定の方向に配列する片理(へんり)や片麻状構造(へんまじょうこうぞう)と呼ばれる特徴的な組織を持ちます。
受験チェックポイント ✅
チェック項目 | 内容 |
---|---|
🔲地球の主な構造の順序 | 地殻 → マントル → 外核 → 内核 |
🔲地球の体積で最も多い部分 | マントル(約80%) |
🔲地震波からわかること | 外核は液体(S波が通らない) |
🔲モホ面とは | 地殻とマントルの境界。地震波が急に速くなる場所 |
🔲リソスフェア・アセノスフェアの違い | 固いプレート・柔らかい対流層 |
🔲大陸地殻と海洋地殻の主な違い | 厚さ、構成物質(密度) |
🔲アイソスタシーの概念 | 地殻がマントルに浮いている均衡状態 |
🔲走時曲線からわかること | 地震波の到達時間と震源距離の関係、地球内部構造 |
🔲変成作用とは | 岩石が高温・高圧で変化すること |
🔲変成岩の主な種類と特徴 | 代表的な変成岩の名前と原岩、特徴を説明できるか |
🔲広域変成作用と接触変成作用の違い | 規模と原因、生じる変成岩の一般的な特徴 |
✅ まとめ
- 地球の形は「やや扁平な回転楕円体」
- 地球内部は成分と性質で分類され、地震波の性質から構造がわかる
- 外核が液体であること、リソスフェアがプレートを構成することは重要!
- 大陸地殻は厚く花崗岩質、海洋地殻は薄く玄武岩質である。
- アイソスタシーは地殻がマントルに浮いてバランスを保っている現象。
- 走時曲線は地震波の伝播から地球内部構造を推測するのに役立つ。
- 変成作用は岩石が高温・高圧などの影響で変化する現象であり、できた岩石を変成岩と呼ぶ。
- 変成作用には広域変成作用と接触変成作用がある。