地学基礎⑫:気候の自然変動
☀ 気候と気象のちがい
- 気象(weather): 短期間(数時間~数日)の大気の状態(例:今日の天気)
- 気候(climate): 長期間(30年以上)の平均的な気象状態(例:東京は温暖湿潤気候)
気候は「長期的な傾向や変化」を表すものであり、本単元ではその「自然な変動」について学ぶ。
🌎 地球の気候は変化してきた
地球の気候は常に一定だったわけではなく、数千年~数百万年のスケールで変動してきた。その変動には自然的要因がある。
📒 気候の自然変動の要因
(1) 地球軌道の変化(ミランコビッチサイクル)
地球の軌道や傾きの変化により、太陽から受けるエネルギー量が変わり、気候にも影響を与える。
種類 | 周期 | 内容 |
---|---|---|
公転軌道の離心率変化 | 約10万年周期 | 楕円の程度が変化し、太陽からの距離が変わる |
地軸の傾きの変化 | 約4.1万年周期 | 傾きが変わると、季節の差が変化する |
地軸の歳差運動 | 約2.3万年周期 | 地軸の向きが変わり、季節のタイミングがずれる |
▶ これらを総称して「ミランコビッチ・サイクル」と呼ぶ。
▶ 氷期と間氷期の交替にも関係しているとされる。
(2) プレート運動・大陸移動
プレートの動きにより大陸の位置が変わると、海流や大気の循環パターンも変わるため、気候が変動する。
例:パンゲア超大陸の形成と分裂により、古生代~中生代の気候が大きく変化した。
(3) 火山の噴火
- 大規模な噴火では火山灰や硫黄化合物(SO₂)が成層圏まで到達し、太陽光を反射して気温が一時的に低下する。
例:
- 1815年のタンボラ火山の大噴火 → 翌年「夏のない年(1816年)」に
- 農作物不作や冷夏を引き起こした。
(4) 太陽活動の変化(黒点数の変動)
- 太陽黒点が少ない時期は、太陽活動が弱まり、地球の気温もやや低下する傾向がある。
例:
- マウンダー極小期(1645〜1715年):太陽黒点がほとんどなく、ヨーロッパでは「小氷期」に
- テムズ川が凍るなどの現象が記録されている。
(5) 氷床・海洋・植生のフィードバック効果
- 気温が低下 → 氷床拡大 → 太陽光の反射率(アルベド)上昇 → さらに気温が下がる
- 植生の変化も気候に影響を与える(光合成によるCO₂吸収など)
🥶 氷期と間氷期の繰り返し
- 更新世(約260万年前~1.2万年前):氷期と間氷期が交互に続いた時代
- 日本では氷期には海水面が100m近く低下し、陸続きになる地域も多かった
- 現在は完新世(間氷期)にあたり、比較的温暖な気候
📈 地質からわかる過去の気候変動
地球の過去の気候は、以下のような間接的な証拠(プロキシデータ)から調べる。
証拠 | 説明 |
---|---|
年輪 | 木の年輪の幅 → 温暖期には広く、寒冷期には狭くなる |
氷床コア | 南極やグリーンランドの氷を掘削 → 氷中の気泡から過去の大気組成を分析(CO2濃度など) |
海底堆積物 | 有孔虫の殻に含まれる酸素の同位体比(18O/16O)から海水温を推定 |
サンゴの骨格 | 成長速度や酸素同位体から過去の海水温を推定 |
👤 気候変動と人間生活の関わり
自然な気候変動であっても、人間社会に大きな影響を与える。
変動 | 影響例 |
---|---|
小氷期 | 農作物不作、飢饉、疫病の流行など |
火山噴火による冷夏 | 農業生産への打撃、経済活動停滞 |
▶ 人類は、自然の気候変動に適応しながら生活を築いてきた。
受験チェックポイント ✅
内容 | チェック |
---|---|
🔲ミランコビッチサイクルの3要素 | 離心率・地軸傾き・歳差運動の周期と影響 |
🔲氷期と間氷期 | 更新世に繰り返し、現在は間氷期(完新世) |
🔲気候に影響を与える自然要因 | 火山、太陽活動、大陸移動、氷床など |
🔲火山噴火の例 | 1815年タンボラ → 1816年「夏のない年」 |
🔲黒点の減少と寒冷化の関係 | マウンダー極小期=小氷期と関連 |
🔲気候変動の証拠 | 年輪・氷床コア・海底堆積物・サンゴなど |
📍 補足(+α)
- ミランコビッチサイクルが氷期の周期と一致していることは、氷床コアなどの研究から明らかにされている。
- ただし、これらの変動は数千~数万年規模の長期変化であり、近年の急激な温暖化とは異なる要因(人為的)が関与している点にも注意。