地学基礎①:プレートの運動
🧭1. プレートとは何か?
地球の表面は、十数枚の「プレート(板)」に分かれている。これらは厚さ約100km程度の「岩石のかたまり」で、リソスフェア(岩石圏)とも呼ばれる。
- プレートは常に移動している。
- 移動速度は年間数cm(人間の爪が伸びる速さとほぼ同じ)。
この理論は「プレートテクトニクス(plate tectonics)」と呼ばれ、地震・火山・山脈の形成などを説明する現代地学の基本理論。
🔥2. プレートが動く原動力は?
🌍①マントル対流
地球内部のマントル(高温で粘性のある岩石)が対流しており、これがプレートを「上に乗せて動かす」ようなイメージ。
マントル対流には、大きく分けて以下のような説がある。
- 全マントル対流説:マントル全体が対流する。
- 二層マントル対流説:上部マントルと下部マントルで独立して対流する。
現在の主流は全マントル対流説だが、まだ未解明な部分も多い。
🌋②重力・引きずり・沈み込み
- 海洋プレートは重く、海溝で沈み込みながら引っ張る(プル力)。
- 新しいプレートは中央海嶺で作られ、古いプレートは沈み込む。
このようにして、プレートが循環している。
🗺️3. プレートの種類と境界
プレートの種類
プレート名 | 主な場所 |
---|---|
太平洋プレート | 日本列島の東、ハワイ、南太平洋 |
フィリピン海プレート | 日本列島の南 |
ユーラシアプレート | ヨーロッパ・アジアの大陸部 |
北アメリカプレート | 北アメリカ大陸・東日本 |
ナスカプレート | 南米の西岸沖(アンデス山脈に沈み込む) |
プレートの境界のタイプ
境界の種類 | 特徴 | 地形・活動例 |
---|---|---|
発散境界(離れる) | プレート同士が離れ、新しい海洋地殻ができる | 中央海嶺(大西洋中央海嶺)、アイスランド |
収束境界(近づく) | 一方のプレートが沈み込む | 海溝(日本海溝)、火山列(日本・アンデス山脈) |
すれ違い境界(横ずれ) | プレートが横にずれる「トランスフォーム断層」 | サンアンドレアス断層(カリフォルニア) |

図:プレートの分布(出典:Wikipedia)
🌏4. 日本列島とプレートの関係
日本列島は、4つのプレートがぶつかり合う地点にある「世界有数のプレート境界地域」。
日本に影響する主なプレート:
- 太平洋プレート:東日本の下に沈み込む → 日本海溝
- フィリピン海プレート:南西諸島・伊豆小笠原の下に沈み込む → 南海トラフ
- 北アメリカプレート:北海道~関東の地下に広がる
- ユーラシアプレート:西日本を支える大陸プレート
このため、日本では地震・火山が多発する。
🏔️5. プレートの運動がもたらす地殻変動
🔶 火山活動
- 海洋プレートが沈み込むと、マグマが発生し火山帯が形成される。
- 日本の火山はほとんどがこのパターン(島弧型火山)。
🔷 地震
- 沈み込むプレートとの摩擦が限界に達するとひずみが解放され、地震が発生。
- プレート境界型地震(例:東日本大震災)、内陸地震(断層活動)もプレートのひずみが原因。
🔺 山脈の形成
- 大陸プレート同士がぶつかると、地殻が圧縮されて盛り上がり、山脈(例:ヒマラヤ山脈)ができる。
造山帯
プレートの収束境界では、地殻が大規模に変動し、褶曲(しゅうきょく)や断層が発達し、山脈が形成される地域を造山帯と呼びます。
- 環太平洋造山帯:太平洋プレートの沈み込み帯に沿って分布し、アンデス山脈、ロッキー山脈、日本列島、ヒマラヤ山脈などが含まれます。火山活動や地震活動が活発です。
- アルプス・ヒマラヤ造山帯:アフリカプレートとインドプレートがユーラシアプレートに衝突して形成されたもので、アルプス山脈、ヒマラヤ山脈などが含まれます。巨大な褶曲山脈が特徴です。
♨️6. ホットスポットとプルーム
ホットスポット
プレート境界から離れた場所でも、火山活動が見られることがあります。このような場所をホットスポットと呼びます。代表的な例としてハワイ諸島があります。
- ホットスポットの火山は、プレートが移動しても同じ場所で噴火を繰り返すため、プレートの移動方向に沿って火山列を形成します(例:ハワイ諸島から天皇海山列)。
プルーム
ホットスポットの火山活動は、プルームという地球深部からの高温のマントル物質の湧き上がりによって引き起こされると考えられています。
- プルームは、マントル深部(核との境界付近)から上昇する熱い岩石の柱です。
- プルームには、ホットプルーム(上昇流)とコールドプルーム(下降流)があります。
- ホットプルームが地表近くまで上昇すると、その熱でマグマが発生し、ホットスポット火山を形成します。
- コールドプルームは、沈み込んだプレートがマントル深部へと沈み込んでいくことで形成されると考えられています。

図:プルームテクトニクス(出典:Wikipedia)
🔍7. プレートテクトニクス理論の登場
1960年代に提唱された理論。背景には以下の発見がある。
- 大西洋中央海嶺から海底地殻が広がっている(海底拡大説)
- 地磁気の逆転が海底にしま模様として残っている → 新旧の海洋地殻の証拠
- 地震の震源分布がプレートの沈み込みと一致
これらにより、「大陸移動説(ウェゲナー)」が現実のプレートの動きとして説明可能になった。
【発展】地震波トモグラフィー
地震波トモグラフィーは、地震波の伝わる速度が地球内部の温度や物質の密度の違いによって変化する性質を利用して、地球内部の三次元構造を画像化する技術です。
- 地震波が通常よりも速く伝わる領域は、温度が低く密度の高い冷たい物質(コールドプルームや沈み込んだプレート)があることを示します。
- 逆に、地震波が通常よりも遅く伝わる領域は、温度が高く密度の低い熱い物質(ホットプルームやマグマ溜まり)があることを示します。
- この技術によって、マントル対流の様子や、沈み込んだプレートがマントル深部に達していること、ホットプルームの上昇などが視覚的に捉えられるようになり、プレートテクトニクスやプルームテクトニクスといった地球科学の理論を裏付ける重要な証拠となっています。
受験チェックポイント ✅
チェック項目 | 内容 |
---|---|
🔲 プレートとは何か | 地球表面の岩石の板(リソスフェア)で、数cm/年で移動する |
🔲 プレートの境界の3種類 | 発散境界・収束境界・すれ違い境界の特徴と例を言えるか |
🔲 プレートの運動の原動力 | マントル対流・沈み込み・プル力 |
🔲 日本に影響を与える4つのプレート | 太平洋・フィリピン海・北アメリカ・ユーラシア |
🔲 地震や火山活動との関係 | プレートの沈み込みで火山・地震が多発する理由を説明できるか |
🔲 山脈が形成される場所 | 造山帯、特に大陸プレート同士の衝突で巨大山脈が形成される |
🔲 ホットスポットとプルームの関係 | ホットスポットはプレート境界外の火山活動で、深部のホットプルームが原因 |
🔲 プレートテクトニクスと大陸移動説の違い | 「大陸そのものが動く」 vs 「プレートが動く」理論的な進化 |
🔲 地震波トモグラフィーでわかること | 地球内部の温度や物質分布の三次元構造(ホットプルーム、コールドプルームなど) |
📝 まとめ
- プレートは地球の表面を覆う岩石の板で、年間数cmの速さで移動している。
- プレート同士の境界では、火山や地震、山脈の形成など、さまざまな地殻変動が起きる。
- 造山帯はプレートの衝突によって山脈が形成される場所である。
- ホットスポットはプレート境界外の火山で、地球深部からの「プルーム」と呼ばれるマントル物質の上昇流が原因。
- 日本列島は複数のプレートの境界にあり、災害リスクが高いが、同時に自然の恵みにもあふれている。
- プレートテクトニクスは地学の基本理論であり、地球のダイナミックな姿を理解するカギとなる。
- 地震波トモグラフィーは地球内部の構造を可視化し、プレートやプルームの動きを解明する重要な手段である。