地学基礎⑤:地震・火山がもたらす恵みと災害
この記事で探究すること
プレートの境界に位置する日本は、「地震大国」「火山大国」だ。それは、大きな災害のリスクと常に隣り合わせであることを意味する。でも、その一方で、火山や地殻変動は、わたしたちの生活に豊かな「恵み」もあたえてくれているんだ。この単元では、地球の活動がもつ「二面性」を理解し、科学の知識を、災害から命を守る「防災」へとつなげる方法を探究するよ。
1. 火山がもたらす恵みと災害
火山活動は、地球内部のエネルギーが地表に現れるダイナミックな現象だ。
- 恵み
- 温泉・地熱:マグマの熱は、地下水を温めて温泉を生み出し、地熱発電というクリーンなエネルギー源となる。
- 観光資源:富士山や阿蘇山など、雄大で美しい火山の景観は、多くの人々を惹きつける観光資源となる。
- 鉱物資源:マグマが冷え固まる過程で、金・銀・銅などの有用な金属が濃集し、鉱床が作られることがある。
- 災害
- 溶岩流:高温の溶岩が、地形に沿って家や田畑を焼き尽くしながら流れ下る。
- 火砕流:数百度の高温の火山灰や岩石、ガスが一体となって、時速100km以上の猛スピードで山肌を駆け下りる、最も危険な火山現象。
- 火山灰:広範囲に降り積もり、農作物に被害をあたえたり、交通機関や電子機器を麻痺させたり、健康被害を引き起こしたりする。
- 噴石:火口から噴き飛ばされた大小の岩石。火口周辺では、小さな噴石でも致命的な被害をもたらす。
2. 地震がもたらす恵みと災害
プレートのひずみによって引き起こされる地震もまた、地形を形成する原動力であり、恵みと災害の両面を持つ。
- 恵み
- 地形の形成:長い時間をかけた断層運動や隆起・沈降は、山地や盆地、平野といった、変化に富んだ日本の地形の骨格を作り上げてきた。
- 災害
- 地震動:強い揺れそのものによる、建物の倒壊や、家具の転倒など。
- 津波:海底で発生した大規模な地殻変動が、海水を大きく動かし、巨大な波となって沿岸に押し寄せる。地震動そのものより、はるかに広範囲に、甚大な被害をもたらすことがある。
- 液状化現象:水分を多く含んだ砂質の地盤が、強い揺れによって一時的に液体のようになり、建物を沈下・傾斜させる。
- 土砂災害:地震の揺れが引き金となって、がけ崩れや地すべりを引き起こす。
コレクトの防災ラボ:ハザードマップと防災気象情報
自然災害のリスクは、全ての場所で均一ではありません。ハザードマップは、過去のデータや地形の科学的分析に基づき、どの場所に、どのような災害(洪水、土砂災害、津波など)が、どの程度の規模で起こりうるかを示した「リスクの地図」です。自らの居住地や勤務地のリスクを事前に把握しておくことは、防災の論理的な第一歩です。
また、気象庁などが発表する防災気象情報(警報、注意報、噴火警戒レベルなど)は、危険が差し迫っていることを知らせる重要なシグナルです。これらの情報が、どのような科学的根拠に基づいて、どのような基準で発表されるのかを正しく理解し、情報を受け取った際には、ためらわずに避難などの適切な行動をとることが、被害を最小化する(減災)ための鍵となります。
共通テスト対策まとめ
防災と関連するこの単元は、現代社会を生きる上で必須の教養だ!
- 火山災害の種類と特徴を区別する。
特に「溶岩流」と「火砕流」の速さや危険性の違いは頻出。火山灰がもたらす、広範囲かつ多様な影響についても理解しておくこと。 - 地震に伴う二次災害の種類を覚える。
揺れそのものだけでなく、「津波」や「液状化」が、どのようなメカニズムで、どのような場所で発生しやすいのかを理解することが重要。 - 「ハザードマップ」と「防災気象情報」の役割を理解する。
ハザードマップは「事前のリスク把握」、防災気象情報は「差し迫った危険の伝達」という、時間軸の違いを意識しよう。
練習問題
問1:火山噴出物のうち、高温のガスと火山灰などが一体となって、高速で山体を流れ下る最も危険な現象を何というか。
問2:海底で発生した大規模な地殻変動によって引き起こされ、沿岸部に甚大な被害をもたらすことがある波を何というか。
問3:過去のデータや地形の分析に基づき、災害のリスクがある区域を示した地図を何というか。
解答と解説
問1の答え:火砕流
問2の答え:津波
問3の答え:ハザードマップ