地学基礎⑱:太陽と恒星
この記事で探究すること
わたしたちの太陽は、夜空にかがやく星たちと、同じ「恒星」の仲間なんだ。でも、どうして太陽だけが、あんなに大きく、明るく見えるんだろう? そして、星の色がちがって見えるのはなぜ? この単元では、恒星の基本的な性質である「明るさ」と「色(表面温度)」の関係を探り、恒星という天体の多様な一生について、その壮大な物語をひもといていくよ。
1. 恒星の明るさ:見かけの等級と絶対等級
恒星の明るさを表す尺度として「等級」が用いられる。等級は、数字が小さいほど明るい星であることを示す。
- 見かけの等級:地球から見たときの、文字通りの「見かけの明るさ」。星までの距離と、星本来の明るさの両方に影響される。
- 絶対等級:すべての恒星を、地球から10パーセク(約32.6光年)の距離に置いたと仮定したときの明るさ。星が本来持っている、真の明るさを示す。
太陽は、見かけの等級が-26.7等と、全天で最も明るい天体だが、これは単に地球から非常に近いためだ。もし、すべての恒星を同じ距離から比べたなら(絶対等級)、太陽は4.8等という、ありふれた明るさの星にすぎない。
2. 恒星の色と表面温度
恒星の色は、その星の表面温度と、密接な関係がある。鉄を熱すると、赤→黄→白→青白と色を変えていくように、恒星も、表面温度によって、その色が変化する。
- 表面温度が高い星ほど → 青白く見える
- 表面温度が中くらいの星ほど → 白~黄色く見える(太陽はこのタイプ)
- 表面温度が低い星ほど → 赤く見える
恒星の光を、プリズムなどを通して色の帯に分けたものを「スペクトル」という。スペクトルの種類(吸収線の現れ方)を分析することで、恒星の表面温度や、大気の成分を、よりくわしく知ることができる。
3. 恒星の進化とHR図
恒星の「明るさ(絶対等級)」を縦軸に、「表面温度(スペクトル型)」を横軸にとって、たくさんの恒星をプロットした図を「ヘルツシュプルング・ラッセル図(HR図)」という。HR図を見ると、ほとんどの恒星が、左上から右下にかけての帯状の領域に集まっていることがわかる。この領域を「主系列星」とよぶ。
恒星は、その一生のほとんど(約9割)を、主系列星として安定してかがやく。太陽も、この主系列星の一つだ。主系列星は、中心部で水素をヘリウムに変える「核融合反応」によって、エネルギーを生み出している。
コレクトの発展ラボ:恒星の多様な運命
豆知識ですが、恒星の一生は、その生まれたときの質量によって、運命が大きく異なります。
- 太陽程度の質量の恒星の終末:中心部の水素を使い果たすと、外層が大きくふくらんで、表面温度が低い「赤色巨星」となります。やがて、外層のガスは宇宙空間へ放出され(惑星状星雲)、中心には非常に高密度な「白色矮星」という燃えかすの星が残されます。これが、約50億年後の、わたしたちの太陽の未来の姿です。
- 太陽よりずっと重い恒星の終末:重い星は、燃料の消費が激しく、寿命は数百万年と短いですが、その最期は壮絶です。赤色巨星よりさらに巨大な「赤色超巨星」となったあと、中心核が自らの重力に耐えきれなくなり、「超新星爆発」という大爆発を起こします。その衝撃で、鉄より重い元素(金、ウランなど)が合成され、宇宙空間にばらまかれます。中心には、「中性子星」や、さらに重い星の場合は「ブラックホール」が残されます。
わたしたちの体や、地球を作っている重い元素はすべて、はるか昔に、どこかの大質量星が超新星爆発を起こしてくれたおかげで、存在しているのです。
共通テスト対策まとめ
恒星の性質は、HR図と進化の道筋がポイントだ!
- 「見かけの等級」と「絶対等級」の違いを、明確に説明できるようにする。
絶対等級は「10パーセク」の距離においたときの明るさ、という定義は必須。 - 恒星の色と表面温度の関係を覚える。
「青い星=高温」「赤い星=低温」という基本は絶対! - HR図の「縦軸(絶対等級)」と「横軸(表面温度)」、そして「主系列星」の位置を理解する。
左上ほど「明るく、高温」、右下ほど「暗く、低温」な星がプロットされる。 - 恒星の進化の道筋を、質量と関連づけて理解する。
太陽程度の質量の星は「赤色巨星→白色矮星」、重い星は「超新星爆発→中性子星/ブラックホール」という、2つの運命の違いを押さえておこう。
練習問題
問1:すべての恒星を、地球から10パーセクの距離に置いたと仮定したときの明るさを示す等級を何というか。
問2:恒星の色と表面温度の関係について、表面温度が最も高い恒星は、何色に近くなるか。
問3:太陽のような質量の恒星が、その一生の最後に迎える姿は何か。また、太陽よりずっと重い恒星が、その最期に起こす巨大な爆発現象を何というか。
解答と解説
問1の答え:絶対等級
問2の答え:青白い色
問3の答え:
太陽程度の質量の恒星の最後:白色矮星
重い恒星の爆発現象:超新星爆発