地学基礎⑦:地層の形成と地質構造
この記事で探究すること
地層は、もともと海底などで、水平に、静かに積もっていくはずだった。でも、わたしたちが実際に見るがけの地層は、大きく傾いていたり、ぐにゃりと曲がっていたり、途中でずれていたりする。これは一体なぜなんだろう? この単元では、地層が積もった「あと」に、地球の内部から加わる巨大な力によって、地層がどのように変形するのか、そのダイナミックなプロセスを探究していくよ。
1. 地層累重の法則と整合・不整合
地層を読み解く上で、最も基本的な大法則が「地層累重の法則」だ。これは、「下の地層ほど古く、上の地層ほど新しい」という、ごく当たり前のルールを指す。しかし、この法則が成り立つのは、地層が連続的に積もっている場合に限られる。
- 整合(せいごう):地層が、時間的に連続して、ほぼ平行に積み重なっている関係。
- 不整合(ふせいごう):上下の地層の間に、大きな時間の隔たり(堆積の中断や、侵食)がある関係。地層が一度隆起して侵食を受け、再び沈降して新たな地層が積もることで形成される。過去の大きな地殻変動の証拠となる。
2. 地層の変形:断層としゅう曲
地層が積もったあと、プレート運動などによって巨大な力が加わると、地層は変形する。その代表的なものが「断層」と「しゅう曲」だ。
- 断層:地層が、ある面を境にして、くいちがってずれたもの。かかる力の向きによって、主に3種類に分類される。
- 逆断層:押す力(圧縮応力)によって、上の地層が下の地層に乗り上げる断層。
- 正断層:引っぱる力(張力応力)によって、上の地層が下の地層に対してすべり落ちる断層。
- 横ずれ断層:水平方向にすれちがう力によって、地層が水平にずれる断層。
- しゅう曲:地層が、波のようにぐにゃりと曲げられた構造。押す力によって形成される。山脈などでよく見られる。
- 背斜(はいしゃ):上に凸に曲がった構造。古い地層が中心部にくる。
- 向斜(こうしゃ):下に凸に曲がった構造。新しい地層が中心部にくる。
コレクトの論理 de 解説:地質図の読解
地層の広がりや構造を、地図上に表現したものを「地質図」とよびます。地質図では、地層が地表と交わる線(露頭線)と、走向・傾斜の記号が描かれます。
- 走向:地層面と、水平面が交わる線の方向。地図上では、長い線で示される。
- 傾斜:地層面が、水平面からどれだけ傾いているかを示す角度。短い線が、最も急に傾いている方向を示す。
これらの情報を読み解くことで、地表からは見えない地下の地質構造(しゅう曲や断層の存在)を、立体的に推定することが可能になります。例えば、同じ地層が、ある谷を挟んでV字模様を描いている場合、そのV字の尖端が指す方向から、地層の傾斜方向を読み取ることができます(V字の法則)。
コレクトの発展ラボ:貫入と噴出
豆知識ですが、地層の変形は、堆積岩だけでなく、火成岩との関係からも読み解くことができます。
- 貫入:マグマが、既存の地層の中に割り込んで入り込み、そこで冷え固まること。貫入したマグマの熱で、まわりの地層が変成(接触変成作用)を受けることがある。「切る-切られるの法則」により、貫入した火成岩は、貫入された地層よりも新しいと判断できる。
- 噴出:マグマが地表に噴き出し、溶岩流などとして地層の上に積もること。この場合、上の地層には熱による変成作用は及ばない。
不整合の関係と、貫入・噴出の関係を正しく見分けることは、地層の歴史を正確に復元する上で、極めて重要なスキルです。
共通テスト対策まとめ
地質構造は、地質図の読解問題として頻出だ!
- 「不整合」が、どのようなプロセス(堆積→隆起→侵食→沈降→堆積)でできるかを説明できるようにする。
不整合面は、大きな地殻変動があったことを示す、決定的な証拠だ。 - 断層の3タイプを、かかる力の向きとセットで覚える。
「逆断層=押す力」「正断層=引っぱる力」という関係は絶対! - しゅう曲の「背斜」と「向斜」を、断面図の形で区別できるようにする。
「背斜の中心は古い地層」「向斜の中心は新しい地層」というルールも重要。 - 「切る-切られるの法則」を理解する。
断層や貫入岩体は、それによって切られている地層よりも、新しい。地質イベントの前後関係を判断する基本原則だ。
練習問題
問1:地層が、時間的に大きな隔たりをもって重なっている関係を何というか。
問2:地層に押す力がはたらいて形成される、波のように曲がった構造を何というか。
問3:ある地層が、断層によって切られている。このとき、地層と断層では、どちらが新しいと考えられるか。そのように判断する根拠となった法則名も答えなさい。
解答と解説
問1の答え:不整合
問2の答え:しゅう曲
問3の答え:
新しいもの:断層
法則名:切る-切られるの法則
【解説】地層が先に存在していなければ、断層がその地層を切ることはできない。したがって、切った側(断層)が、切られた側(地層)よりも新しいと判断できる。