地学基礎①:地球の概観と構造
この記事で探究すること
ぼくたちが住むこの地球。丸いってことは知っているけど、その「正確な形」は? 「大きさ」は? そして、決して見ることのできない「中身」は、いったいどうやって調べたんだろう? この単元では、地球という惑星の最も基本的なプロフィールと、人類が目に見えない星の内部構造を、いかにして科学的に解き明かしてきたのか、その知の冒険の歴史をたどるよ!
1. 地球の形と大きさ
地球は完全な球ではなく、自転の遠心力によって、赤道方向にわずかにつぶれた「回転楕円体」に近い形をしている。その平均半径は約6400kmだ。この驚くべき数値を、人類は紀元前から、きわめて論理的な方法で求めていたんだ。
コレクトの数理的アプローチ:エラトステネスの挑戦
紀元前3世紀、ギリシャの学者エラトステネスは、以下の情報と仮定を基に、地球の大きさを計算しました。
- シエネの町では、夏至の日の正午に、深い井戸の底まで太陽の光が届く(=太陽が真上に来る)。
- 同じ日、同じ時刻に、シエネの真北にあるアレクサンドリアの町では、太陽は天頂から約7.2°傾いている。
- 地球に届く太陽光は、どこでも平行である。(仮定)
- 地球は完全な球形である。(仮定)
平行線の錯角は等しいので、2地点間の中心角も7.2°となります。当時の測量で、2地点間の距離は約925kmとされていました。ここから、地球全周 L を求める比例式が立てられます。
2. 地球の内部構造
わたしたちは、地球の内部を直接掘って調べることはできない。では、どうやってその構造を知るのか? その最大の武器が、中学でも学んだ「地震波」だ。P波とS波の伝わり方の違いを分析することで、地球内部が、性質の異なるいくつかの層に分かれていることがわかっている。
- 地殻:地表をおおう、ごく薄い岩石の層。大陸地殻(厚い)と海洋地殻(薄い)がある。
- マントル:地球の体積の約8割を占める、固体の岩石(かんらん岩)の層。
- 核:鉄やニッケルを主成分とする、中心部分。
- 外核:S波が伝わらないことから、液体であるとわかっている。
- 内核:非常に高い圧力がかかっているため、高温でありながら固体であると考えられている。
コレクトの発展ラボ
アイソスタシー(地殻均衡)
豆知識ですが、地球の重力は、どこでも一定ではありません。しかし、ヒマラヤのような巨大な山脈でも、その質量の分だけ重力が異常に大きくなるわけではありません。
これは、軽い地殻が、その下にある、より密度の高いマントルの上に氷山のように「浮いて」おり、標高が高い山脈の下では、その重さを支えるために、地殻がマントルの中に深く「根」を張っているためだと考えられています。この、地殻が重力的にバランスを保っている状態を「アイソスタシー」とよびます。
地球の磁場
地球は、巨大な棒磁石が地軸から少し傾いて入っているかのような「地磁気」を持っています。この磁場の源は、液体の金属でできている**外核**の対流運動(ダイナモ理論)だと考えられています。地磁気は、太陽から吹き付ける有害な電気を帯びた粒子(太陽風)から、地球の生命を守る、天然のバリアの役割を果たしています。
共通テスト対策まとめ
地球の基本情報は、確実に得点源にしよう!
- 地球の形は「回転楕円体」であり、平均半径は約「6400km」である。
エラトステネスの計算方法は、その原理(中心角と弧の長さの比例関係)と、仮定(太陽光の平行性)をセットで理解すること。 - 地球内部の「4層構造」と、その状態(固体か液体か)を完璧に覚える。
特に、「外核が液体である」という事実と、その根拠が「S波が伝わらないから」であることは、絶対的な必須知識だ! - 「アイソスタシー」の概念を理解する。
「山脈の下には、根がある」というイメージを持っておこう。
練習問題
問1:地球の形状に最も近い回転楕円体のことを何というか。
問2:地球内部で、唯一液体だと考えられている層はどこか。また、そのように判断できる根拠は何か。
問3:エラトステネスの方法で、2地点間の距離が1000km、その2地点間の緯度の差が9°であった場合、地球の全周は何kmになるか計算しなさい。
解答と解説
問1の答え:地球楕円体
問2の答え:
層の名前:外核
根拠:地震波のS波が伝わらないから。
問3の答え:40000km
【解説】緯度の差は、そのまま地球の中心角の差と考えることができる。求める地球全周を L とすると、以下の比例式が成り立つ。