地学基礎⑭:気候の自然変動
この記事で探究すること
「地球温暖化」が大きな問題になっているけど、地球の気候って、そもそもずっと安定していたのかな? 実は、地球の気候は、人間がいなかった大昔から、あたたかい時代と寒い時代をくり返してきたんだ。この単元では、地球の気候が、自然のメカニズムだけで、どのように、そしてなぜ変動してきたのか、その壮大な歴史と、天文学的な要因を探究していくよ。
1. 地球史スケールの気候変動
過去6億年の地球の歴史を振り返ると、気候は大きく変動してきた。その証拠は、地層に残されたさまざまな記録から読み解くことができる。
- 氷河時代と間氷期:地球史の中には、南極や北極に巨大な氷床が存在する「氷河時代」と、氷床がほとんどない温暖な時代が、くり返し訪れている。現在は、約260万年前に始まった新生代第四紀の氷河時代の中の、比較的温暖な期間(間氷期)にあたる。
- 過去の気温の推定方法:過去の気温は、南極の氷床コアに含まれる空気の泡の分析や、サンゴや有孔虫の化石に含まれる酸素の同位体比(¹⁸O/¹⁶O)などを調べることで、推定することができる。
2. 氷期-間氷期サイクルとミランコビッチ・サイクル
過去数十万年の気候をくわしく見ると、約10万年の周期で、寒い「氷期」と、あたたかい「間氷期」をきれいにくり返していることがわかる。この規則的なサイクルの主な原因と考えられているのが、地球の公転軌道や自転軸の、天文学的な周期変化だ。これを「ミランコビッチ・サイクル」という。
コレクトの論理 de 解説:3つの天文学的要因
ミランコビッチ・サイクルは、以下の3つの周期的な変化から構成されています。これらの組み合わせによって、地球が太陽から受け取るエネルギーの量と、その地理的分布が変化し、気候変動の引き金となると考えられています。
- 離心率の変化(約10万年周期):地球の公転軌道が、真円に近い形から、楕円形へと、周期的に変化する。
- 地軸の傾きの変化(約4万年周期):地球の自転軸の傾きが、約21.5°から24.5°の間で、周期的に変化する。この傾きが大きいほど、季節の変化は激しくなる。
- 歳差運動(約2.6万年周期):地球の自転軸が、コマの首振り運動のように、円を描くように動く。これにより、地軸が傾く方向が変わり、どの季節に地球が太陽に最も近づくかが変化する。
3. 短期的な自然変動
数十年といった、より短い時間スケールでも、気候は自然に変動している。
- エルニーニョ・南方振動(ENSO):数年ごとに、太平洋赤道域の東部の海水温が平年より高くなる「エルニーニョ現象」と、低くなる「ラニーニャ現象」がくり返される。これは、貿易風の強弱と海洋が相互作用することで発生し、世界中の異常気象の原因となる。
- 太陽活動の変動:太陽の黒点数は、約11年の周期で増減している。黒点が多い時期は太陽活動が活発で、太陽から放出されるエネルギーもわずかに増加する。
- 火山の噴火:大規模な火山噴火が起きると、大量の火山灰や硫黄酸化物が成層圏にまで達する。これらが日傘のような役割を果たし、太陽光をさえぎるため、地球全体の気温が一時的に低下することがある(日傘効果)。
共通テスト対策まとめ
自然の気候変動は、時間スケールと原因を結びつけることが重要だ!
- 「氷河時代」と、その中の「氷期」「間氷期」という言葉の意味を区別する。
現在は「氷河時代の中の間氷期」であることを理解しよう。 - 約10万年周期の氷期-間氷期サイクルの主な原因が「ミランコビッチ・サイクル」であることを覚える。
ミランコビッチ・サイクルを構成する3つの要素(離心率、地軸の傾き、歳差運動)の名称も知っておくとよい。 - エルニーニョ現象が「太平洋赤道域の海水温の変動」であり、世界の異常気象の原因となることを理解する。
- 大規模な火山噴火が、気温を「低下」させる効果(日傘効果)を持つことを覚える。
温室効果とは逆の働きなので、混同しないように注意。
練習問題
問1:地球の公転軌道の形や、自転軸の傾きの周期的な変化によって、氷期と間氷期のサイクルが引き起こされるとする理論を何というか。
問2:数年ごとに、太平洋赤道域の東部の海水温が平年より高くなる現象を何というか。
問3:大規模な火山噴火が、地球全体の気温にどのような影響をあたえるか。また、その主な原因は何か。簡潔に説明しなさい。
解答と解説
問1の答え:ミランコビッチ・サイクル
問2の答え:エルニーニョ現象
問3の答えの例:
影響:気温を低下させる。
原因:噴火によって成層圏に放出された火山灰などが、太陽光をさえぎる「日傘効果」をもたらすため。