地学基礎⑬:日本の天気と気象災害
この記事で探究すること
春・夏・秋・冬、そして梅雨。日本の四季の天気は、実に変化に富んでいるよね。この単元では、中学でも学んだ日本の天気を、高校レベルの知識、「気団」と「前線」のダイナミックな動きから、より深く、論理的に解き明かすよ。そして、それらの気象現象が、ときに牙をむき「気象災害」となる、そのメカニズムと備えについても探究する。
1. 日本の天気を支配する気団
日本の天気は、季節ごとに、性質の異なる4つの気団の勢力争いの影響を強く受ける。
- シベリア気団:冬に優勢。冷たく乾燥した、大陸性の寒帯気団。
- 小笠原気団:夏に優勢。高温で湿潤な、海洋性の熱帯気団。
- オホーツク海気団:梅雨や初夏に影響。冷たく湿潤な、海洋性の寒帯気団。
- 揚子江気団:春と秋に影響。温暖で乾燥した、大陸性の熱帯気団。
2. 季節ごとの天気と気圧配置
これら気団の消長によって、季節ごとに典型的な気圧配置が生まれる。
- 冬:西高東低の気圧配置。シベリア高気圧から、冷たく乾燥した北西の季節風が吹く。この風が日本海であたためられて水蒸気を補給し、日本海側に大雪を降らせる。太平洋側は乾燥した晴天となる。
- 夏:南高北低の気圧配置。太平洋高気圧(小笠原気団)に覆われ、高温多湿で晴れの日が続く。南東の季節風が卓越する。
- 春・秋:揚子江気団からちぎれた移動性高気圧と、低気圧が、偏西風にのって交互に日本付近を通過する。そのため、天気は数日周期で変化する。
- 梅雨(初夏):冷たいオホーツク海気団と、暖かい小笠原気団が日本の南岸でせめぎあい、ほぼ動かない梅雨前線(停滞前線)を形成する。この前線上に低気圧が発生すると、雨が強まる。
- 台風(夏~秋):熱帯の海上で発生した熱帯低気圧のうち、最大風速が約17m/s以上に達したもの。巨大なエネルギーを持ち、大雨、暴風、高潮などの甚大な災害を引き起こす。
コレクトの論理 de 解説:温帯低気圧
春や秋に天気を周期的に変える「低気圧」は、「温帯低気圧」とよばれるものです。これは、中緯度帯で、南の暖かい空気(暖気)と、北の冷たい空気(寒気)がぶつかることで発生します。
温帯低気圧は、中心から南東方向に温暖前線を、南西方向に寒冷前線を伴っているのが特徴です。低気圧は偏西風に流されて西から東へ移動するため、わたしたちのいる場所を、まず温暖前線が通過し(しとしと雨→気温上昇)、次に寒冷前線が通過する(にわか雨→気温下降)という、典型的な天気の変化を経験することになります。
3. 主な気象災害
日本の地理的・気象的条件は、多様な気象災害をもたらす。
- 集中豪雨:積乱雲が同じ場所で次々と発生・発達することで、狭い範囲に数時間にわたって猛烈な雨が降る現象。中小河川の急な増水や、土砂災害の直接的な原因となる。
- 雷・竜巻:いずれも、積乱雲の中で発生する激しい現象。
- 高潮:台風の中心付近の気圧が著しく低い(吸い上げ効果)ことと、海に向かう暴風(吹き寄せ効果)によって、海面が異常に上昇する現象。満潮時と重なると、甚大な浸水被害を引き起こす。
- 冷害:夏に、冷たいオホーツク海高気圧の勢力が強まり、北東からの冷たい風(やませ)が吹くことで、気温が上がらず、農作物(特に稲)に被害が出ること。
共通テスト対策まとめ
日本の天気は、気団と前線、気圧配置の組み合わせが全てだ!
- 4つの気団の「性質」と、季節ごとの「典型的な気圧配置」を、天気図のイメージとセットで完璧に覚える。
(冬=西高東低、夏=南高北低) - 温帯低気圧が「寒冷前線」と「温暖前線」を伴うことを理解する。
低気圧が西から東へ移動するにつれて、自分のいる場所の天気がどのように変化するか(温暖前線通過→暖域→寒冷前線通過)を、時系列で説明できるようにしておくこと。 - 梅雨前線(停滞前線)が、性質の異なる2つの気団(オホーツク海気団と小笠原気団)のせめぎあいでできることを理解する。
- 台風が「熱帯低気圧」の一種であり、進行方向右側で風が強まることや、「高潮」を引き起こすメカニズムを覚える。
練習問題
問1:冬の日本の天気に特徴的な気圧配置を、漢字4文字で答えなさい。
問2:春や秋に、天気を周期的に変化させる、寒冷前線や温暖前線を伴った低気圧を何というか。
問3:台風の中心付近の気圧が低いことや、暴風によって海面が異常に上昇する現象を何というか。
解答と解説
問1の答え:西高東低
問2の答え:温帯低気圧
問3の答え:高潮