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地学基礎⑯:日本の自然環境

好奇心旺盛なちさまる この記事で探究すること

地震や火山が多く、四季がはっきりしていて、夏はむし暑く、冬は日本海側で大雪がふる…。わたしたちが当たり前だと思っている「日本の自然環境」は、実は、世界的に見ても、とてもユニークで、ダイナミックなんだ。この単元では、これまで学んできた「プレートテクトニクス」と「気団・海流」という2つの大きな視点から、なぜ日本の自然がこれほどまでに多様で、そして、ときに厳しい姿を見せるのか、その成り立ちを、総まとめとして探究していくよ。

1. 変動帯に位置する日本の地形

日本の地形の最も大きな特徴は、その国土の大部分が、険しい山地によって占められていることだ。これは、日本列島が、地球上で最も地殻変動が活発な場所の一つ、「変動帯」に位置していることに、直接起因している。

具体的には、日本列島の周辺には、4つものプレート(太平洋プレート、フィリピン海プレート、北アメリカプレート、ユーラシアプレート)がひしめき合い、互いに押し合ったり、沈み込んだりしている。このプレートの強力な圧縮の力によって、日本の大地は絶えず東西から押され、盛り上がり(隆起し)、背骨となる山脈を形成してきたんだ。

分析中のコレクト コレクトの論理 de 解説:変動帯の特徴

変動帯である日本列島には、以下の地形的・地質的特徴が顕著に見られます。

  • 急峻な山地と、短い急流河川:プレートの圧縮によって隆起した山地は、傾斜が急になります。そのため、そこを流れる川もまた、急勾配で、流れが速く、強い侵食力を持つことになります。
  • 活発な火山活動:太平洋プレートとフィリピン海プレートが沈み込むことで、地下深くでマグマが生成され、多くの活火山が帯状に分布する「火山フロント(火山帯)」が形成されています。
  • 地震の多発と活断層の存在:プレートの運動によって蓄積されたひずみは、プレート境界での巨大地震や、内陸の岩盤の弱線である「活断層」での直下型地震として、繰り返し解放されます。
  • 複雑な地質:プレートの沈み込みに伴って、海洋プレート上の堆積物が大陸プレートに押し付けられてできた「付加体」や、高い圧力で変成した「変成岩」など、多様で複雑な地質構造が見られます。

2. 四季の変化に富む日本の気候

日本の気候の最大の特徴は、はっきりとした四季が存在することだ。これは、日本が、アジア大陸の東岸、そして、世界最大の大洋である太平洋の西岸という、中緯度の絶妙な位置にあることによる。

この地理的条件によって、季節ごとに勢力を変える、性質の異なる気団の影響を、交互に受けることになる。特に、夏は太平洋からの高温多湿な海洋性気団(小笠原気団)の影響でむし暑くなり、冬は大陸からの冷たく乾燥した大陸性気団(シベリア気団)の影響で寒くなるという、季節風(モンスーン)の影響が極めて顕著だ。

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冬の季節風は「冷たくて乾燥している」はずなのに、どうして日本海側では、世界でも有数の大雪がふるんだろう?

それは、シベリア気団から吹く冷たい季節風が、比較的あたたかい対馬暖流が流れる日本海をわたる際に、大量の水蒸気を補給するからだ。そして、その湿った空気が、日本の背骨である山脈にぶつかって、強制的に上昇させられることで、雪雲が発達し、日本海側に大雪を降らせる。山を越えた空気は、再び乾燥した風(からっ風)となって、太平洋側に吹き降りる。これが、日本の冬の天気を特徴づける、見事なメカニズムなんだ。

豆知識を話すコレクト コレクトの発展ラボ:海流と気候

豆知識ですが、日本のまわりを流れる海流も、気候に大きな影響を与えています。南から流れてくる暖流の黒潮は、日本の気候を温暖で湿潤にし、冬の積雪量を増やす一因となっています。一方、北から流れてくる寒流の親潮は、夏の東北地方や北海道の太平洋側に、冷たく湿った北東風(やませ)をもたらし、冷害の原因となることがあります。このように、日本の自然は、大地・大気・海洋が、複雑に相互作用しあうことで、形作られているのです。

なるほど!と話すちさまる 共通テスト対策まとめ

日本の自然環境は、これまで学んだ知識の総復習だ!

  1. 日本の地形的特徴(山がち、火山・地震が多い)の根本原因が、「変動帯」に位置し、「4つのプレートがひしめき合っている」からであることを、論理的に説明できるようにする。
  2. 日本の気候的特徴(四季が明瞭)の根本原因が、「中緯度の大陸東岸」に位置し、「季節風(モンスーン)」の影響を強く受けるからであることを理解する。
  3. 冬の「日本海側の大雪」と「太平洋側の乾燥した晴天」のメカニズムを、シベリア気団、日本海、季節風、山脈というキーワードを使って説明できるようにする。これは記述問題の最頻出テーマの一つだ。

練習問題

問1:日本の国土の大部分が険しい山地であることや、地震・火山活動が活発であることの、最も根本的な原因は、日本列島が何と呼ばれる地帯に位置しているからか。

問2:日本の気候に大きな影響を与える、夏に優勢となる高温多湿な気団と、冬に優勢となる冷たく乾燥した気団の名前を、それぞれ答えなさい。

問3:冬に、日本海側で大雪が降りやすい理由を、「季節風」「日本海」「山地」という3つの語句をすべて用いて、簡潔に説明しなさい。

解答と解説

問1の答え:変動帯

問2の答え:
夏:小笠原気団
冬:シベリア気団

問3の答えの例:
冬の北西の季節風が、日本海をわたる際に水蒸気を多く含み、日本の中心にある山地にぶつかって上昇することで、日本海側に大雪を降らせるから。