地学基礎⑮:人間活動による環境変化
この記事で探究すること
これまで地球の気候は、自然のサイクルでゆっくりと変化してきた。でも、今起きている「地球温暖化」は、これまでの自然変動とは比べ物にならないスピードで進んでいると言われているんだ。その主な原因は、わたしたち人間の活動にあるという。この単元では、人間活動が地球環境にどのような変化をもたらしているのか、その科学的なメカニズムと、未来への影響について探究するよ。
1. 地球温暖化
地球温暖化は、産業革命以降、人間が石油や石炭などの化石燃料を大量に燃やすことで、大気中の二酸化炭素(CO₂)をはじめとする温室効果ガスの濃度が急激に増加し、地球の平均気温が上昇している現象だ。
大気中の二酸化炭素濃度は、過去数十万年間、自然のサイクルの中で変動してきたが、現在の濃度は、その変動幅をはるかに超えて、異常な速さで上昇しつづけている。これは、南極の氷床コアの分析などから、科学的な事実として確認されている。
コレクトの論理 de 解説:温室効果の強化
温室効果ガスは、地表から放出される熱(赤外線)を吸収し、その一部を再び地表へ返す働きをします。これは、地球を適度な温度に保つために不可欠な、自然なメカニズムです。
しかし、人間活動によってその濃度が必要以上に高まると、まるで、冬に毛布を一枚多くかけるように、宇宙へ逃げるはずの熱が、地表付近に過剰に蓄積されてしまいます。これが「地球温暖化」の基本的なメカニズムであり、「温室効果の強化」と表現されます。
2. 地球温暖化がもたらす影響
平均気温が上昇することは、単に「少し暖かくなる」という問題ではない。地球全体の気候システムに、連鎖的な、そして深刻な影響をもたらすと予測されている。
- 海面水位の上昇:主に、①海水の熱膨張(水温が上がると体積が増える)と、②大陸の氷床(グリーンランドなど)や氷河がとけることによって、海面が上昇する。沿岸の低地や、小さな島国が水没する危険性が高まる。
- 異常気象の増加:大気のエネルギーが増加することで、これまで経験したことのないような強力な台風、集中豪雨、大規模な干ばつなど、極端な気象現象の頻度と強度が増すと懸念されている。
- 生態系への影響:急激な環境変化に、多くの動植物が適応できず、絶滅のリスクが高まる。サンゴの白化現象などがその一例だ。
3. オゾン層の破壊
地球温暖化と並ぶ、もう一つの深刻な大気環境問題が、オゾン層の破壊だ。成層圏に存在するオゾン層は、太陽からの有害な紫外線を吸収し、地上の生命を守るバリアの役割を果たしている。
しかし、かつて冷蔵庫やスプレーなどに広く使われていたフロンガスが、大気中に放出されると、成層圏でオゾンを次々と破壊してしまうことがわかった。特に、南極上空では、冬の間に極めて低温になることで特殊な雲ができ、春になると、その表面でフロンから分解された塩素が、爆発的にオゾン層を破壊する。これが「オゾンホール」だ。
コレクトの発展ラボ:国際的な取り組みの成果
豆知識ですが、オゾン層の破壊は、科学的な危機が解明された後、国際的な協力によって、その対策が比較的成功した事例として知られています。1987年に採択された「モントリオール議定書」により、世界各国が協調してフロンガスの生産と使用を規制した結果、オゾン層は、現在、ゆるやかな回復傾向にあると報告されています。これは、人類が地球規模の環境問題に対して、有効な対策をとりうることを示す、希望ある先例と言えるでしょう。
共通テスト対策まとめ
人間活動と環境変化は、現代社会を生きる上で必須の教養だ!
- 地球温暖化の主な原因物質が「二酸化炭素」であることを覚える。
そして、そのメカニズムが「温室効果の強化」であることを、自分の言葉で説明できるようにする。 - 温暖化の主な影響(海面水位の上昇、異常気象の増加など)を理解する。
特に、海面上昇の主たる原因が「海水の熱膨張」と「氷床の融解」の2つであることを押さえる。 - オゾン層の役割と、それを破壊する原因物質を覚える。
「オゾン層=紫外線を吸収」「破壊物質=フロンガス」という組み合わせは絶対!
練習問題
問1:地球温暖化の主な原因となっている温室効果ガスは何か。
問2:成層圏に存在し、太陽からの有害な紫外線を吸収する役割を持つ層を何というか。
問3:地球温暖化による海面水位の上昇の主な原因を2つあげなさい。
解答と解説
問1の答え:二酸化炭素(CO₂)
問2の答え:オゾン層
問3の答え:① 海水の熱膨張、② 大陸氷床や氷河の融解