地学基礎㉑:宇宙の誕生
この記事で探究すること
夜空に広がる、無数の銀河。そのすべてが、わたしたちから遠ざかっているって、信じられるかい? この驚くべき発見から、科学者たちは「宇宙は、かつて一つの小さな点だったのではないか」と考えるようになった。この単元では、宇宙の始まりである「ビッグバン」理論と、その決定的な証拠について、人類の知の最前線を探究する、究極の旅に出るよ!
1. 膨張する宇宙とハッブルの法則
1929年、天文学者ハッブルは、遠くの銀河ほど、わたしたちから速い速度で遠ざかっているように見えることを発見した。これは、個々の銀河が宇宙空間を移動しているのではなく、宇宙空間そのものが、全体として膨張していることを意味している。
風船の表面に点をいくつか描き、風船をふくらませる様子を想像してみよう。どの点から見ても、他の点は自分から遠ざかっていくように見える。そして、もともと遠くにあった点ほど、より速く遠ざかっていくように見えるはずだ。宇宙の膨張も、これと同じなんだ。
コレクトの数理的アプローチ:ハッブル・ルメートルの法則
ハッブルは、銀河の後退速度 (v) が、その銀河までの距離 (r) に比例することを発見しました。これは、現在「ハッブル・ルメートルの法則」とよばれ、以下のシンプルな数式で表されます。
ここで、\(H_0\)はハッブル定数とよばれる比例定数です。この法則は、宇宙が一様に膨張していることを示す、極めて重要なものです。
銀河の後退速度は、その銀河から来る光のスペクトルが、本来の位置よりも波長が長い側(赤い側)にずれる「赤方偏移」の大きさを測定することで、求めることができます。
2. 宇宙の始まり:ビッグバン理論
宇宙が現在、膨張しているのなら、過去に時間をさかのぼれば、宇宙はどんどん小さく、高密度で、高温になっていくはずだ。そして、約138億年前、宇宙は、きわめて小さく、超高温・超高密度の「点」(特異点)から、大爆発(ビッグバン)によって始まった。これが、現代宇宙論の標準的なモデルである「ビッグバン理論」だ。
3. ビッグバンの2つの証拠
この壮大な理論は、単なる空想ではない。それを裏付ける、2つの決定的な観測的証拠が存在する。
- 宇宙背景放射:ビッグバン直後の超高温の宇宙では、光は電子にじゃまされて、まっすぐ進むことができなかった(「宇宙の晴れ上がり」以前)。しかし、宇宙の誕生から約38万年後、温度が約3000Kまで下がると、電子が原子核にとらえられ、光は初めて宇宙をまっすぐ進めるようになった。この「宇宙の晴れ上がり」の瞬間に放たれた光が、138億年かけて宇宙を旅し、現在、絶対温度約2.7Kのマイクロ波として、空のあらゆる方向から、ほぼ一様に観測されている。これが「宇宙背景放射」だ。
- 元素の存在比:ビッグバン理論によると、宇宙の初期に、最も軽い元素である水素(H)とヘリウム(He)が合成されたと予測される。そして、その質量比は、水素:ヘリウム ≒ 3:1 と計算される。現在の宇宙に存在する元素の割合を観測すると、この理論的な予測と、驚くほど正確に一致している。
コレクトの発展ラボ:宇宙の年齢
豆知識ですが、ハッブル・ルメートルの法則から、宇宙のおおよその年齢を推定することができます。もし、銀河が一定の速度で遠ざかっていると仮定すると、ある銀河までの距離 (r) を、その後退速度 (v) で割れば、その銀河が我々の場所から出発してからの時間、すなわち宇宙が膨張を始めてからの時間(宇宙年齢)が求まります。
つまり、宇宙の年齢は、ハッブル定数の逆数で、おおよそ見積もることができるのです。最新の観測から得られたハッブル定数を用いて計算すると、宇宙の年齢は約138億年と算出されます。
共通テスト対策まとめ
宇宙論は、現代物理学の最前線だ!
- 宇宙が「膨張」していることを、その根拠とともに理解する。
根拠は「遠い銀河ほど、速く遠ざかっている」というハッブル・ルメートルの法則だ。 - ビッグバン理論の2つの決定的な証拠を、自分の言葉で説明できるようにする。
- ① 宇宙背景放射(約2.7Kのマイクロ波)
- ② 元素の存在比(水素:ヘリウム ≒ 3:1)
- 「宇宙の晴れ上がり」というキーワードを理解する。
宇宙の誕生から約38万年後、光がまっすぐ進めるようになった、宇宙史における重要なイベントだ。
練習問題
問1:遠方の銀河ほど、速い速度で遠ざかっていることを示す法則を何というか。
問2:ビッグバン理論の証拠とされる、宇宙のあらゆる方向から観測される、絶対温度約2.7Kの電磁波を何というか。
問3:現在の宇宙に最も多く存在する元素は何か。また、2番目に多く存在する元素は何か。
解答と解説
問1の答え:ハッブル・ルメートルの法則
問2の答え:宇宙背景放射
問3の答え:
1番目:水素
2番目:ヘリウム