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地学基礎⑩:大気の構造と熱収支

好奇心旺盛なちさまる この記事で探究すること

わたしたちが毎日吸っている、空気。「大気」ともよばれるこの空気の層は、いったいどこまで続いていて、どんな構造になっているんだろう? そして、地球が太陽から受けとる莫大なエネルギーを、どうやって宇宙に返し、絶妙なバランスを保っているんだろう? この単元では、大気の鉛直構造と、地球全体のエネルギーの出入りである「熱収支」について探究するよ。

1. 大気の鉛直構造

地球の大気は、地上から宇宙空間まで、一様な性質ではない。高度による温度変化にもとづいて、下から順に「対流圏」「成層圏」「中間圏」「熱圏」の4つの層に区分される。

考え中のちさまる ちさまるといっしょに考えよう!

対流圏では、上空に行くほど太陽に近づくのに、どうして気温は下がっていくんだろう?

それは、大気が、太陽からの光で直接あたためられているわけではないからだ。大気は、まず太陽光が地面をあたため、その地面から放出される熱(赤外線)を受けとって、下からあたためられている。だから、熱源である地面から離れるほど、気温は下がっていくんだね。

2. 地球の熱収支

地球の平均気温は、長い目で見ると、ほぼ一定に保たれている。これは、地球が太陽から受けとるエネルギー量と、地球が宇宙空間へ放出するエネルギー量が、全体として釣り合っている(収支がゼロになっている)からだ。これを「地球の熱収支(放射平衡)」という。

分析中のコレクト コレクトの論理 de 解説:エネルギーの流れ

太陽から地球に入射するエネルギーを100とすると、その流れは以下のようになります。

  • 30%は、雲や地表で反射され、そのまま宇宙空間へ戻る(この反射率をアルベドという)。
  • 20%は、大気や雲に吸収される。
  • 残りの約50%が、地表に吸収される。

吸収されたエネルギーは、最終的に、地表や大気から地球放射(赤外線)として宇宙空間へ放出されます。このとき、大気中の水蒸気や二酸化炭素といった「温室効果ガス」が、地表からの放射の一部を吸収し、再び地表へ返す(温室効果)ことで、地球は生物が生存可能な平均気温(約15℃)に保たれているのです。

教材執筆中のコレクト コレクトの数理的アプローチ:放射平衡温度

仮に、地球に大気がなく、温室効果が全くなかった場合の、地球の平均表面温度(放射平衡温度)を計算してみましょう。物理法則によると、物体が放出するエネルギーは、その表面温度の4乗に比例します(シュテファン・ボルツマンの法則)。

地球が吸収する太陽放射エネルギーと、地球自身が放出する地球放射エネルギーが等しいという「熱収支のつり合い」から計算すると、この放射平衡温度は、約-18℃となります。実際の地球の平均気温(約15℃)よりも、30℃以上も低い値です。この差こそが、大気の持つ「温室効果」がいかに絶大であるかを示しています。

豆知識を話すコレクト コレクトの発展ラボ:緯度別の熱収支

豆知識ですが、地球全体では熱収支は釣り合っていますが、緯度別に見ると、そうではありません。

  • 低緯度地域(赤道付近):太陽からのエネルギーを多く受けとるため、熱収支はプラス(エネルギー過剰)
  • 高緯度地域(極付近):太陽からのエネルギーが少ないため、熱収支はマイナス(エネルギー不足)

この、低緯度で余ったエネルギーを、高緯度へと運ぶ巨大な流れこそが、次単元で学ぶ「大気の大循環」「海流」なのです。地球は、常に熱のバランスをとろうとする、巨大な熱エンジンなのです。

なるほど!と話すちさまる 共通テスト対策まとめ

大気の構造と熱収支は、気象分野の基礎となる最重要テーマだ!

  1. 大気の4層構造の名前と、それぞれの温度変化の傾向を完璧に覚える。
    特に、気象現象が起きる「対流圏」と、オゾン層がある「成層圏」の特徴は頻出。
  2. 地球の熱収支の、基本的な数値(アルベド約30%、地表吸収約50%)を覚える。
    エネルギーの流れを図で理解することが重要。
  3. 「温室効果」のメカニズムを説明できるようにする。
    キーワードは「温室効果ガス(二酸化炭素など)」と「地球放射(赤外線)の吸収・再放射」。
  4. 緯度別の熱収支の不均衡と、そのエネルギー輸送の担い手(大気・海洋)を理解する。

練習問題

問1:大気の鉛直構造のうち、雲の発生などの気象現象が起こる層を何というか。

問2:太陽から入射するエネルギーのうち、雲や地表で反射される割合(アルベド)は、約何%か。

問3:大気中の二酸化炭素などが増加すると、地球全体の平均気温が上昇するのはなぜか。「地球放射」と「吸収」という語句を用いて、簡潔に説明しなさい。

解答と解説

問1の答え:対流圏

問2の答え:約30%

問3の答えの例:
二酸化炭素は、地表から放出される地球放射(赤外線)を吸収し、再び地表へ返す性質を持つ。そのため、大気中の二酸化炭素が増加すると、宇宙へ逃げる熱が減り、地球全体の平均気温が上昇するから。