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地学⑲:風の運動
~風を支配する3つの力~

好奇心旺盛なちさまる この記事で探究すること

天気図を見ると、風は、高気圧から低気圧に向かって、まっすぐ吹いているわけじゃない。渦を巻いたり、等圧線に沿って吹いたりしている。これは一体なぜなんだろう? この単元では、風の動きを支配する、目に見えない3つの力、「気圧傾度力」「転向力(コリオリの力)」「摩擦力」の正体を解き明かし、なぜ上空の風(地衡風)は等圧線に平行に吹くのか、その物理法則を、力のつり合いから、論理的に探究していくよ。

1. 風を動かす3つの力

大気の運動(風)は、主に3つの力の合力によって決まる。

  1. 気圧傾度力:気圧の高い方から低い方へと、空気を動かそうとする、風の根本的な駆動力。等圧線の間隔がせまいほど、気圧の傾きが急であり、気圧傾度力は大きくなる(=風が強くなる)。
  2. 転向力(コリオリの力):地球の自転によって生じる、見かけの力。運動する物体に対して、北半球では進行方向の右向きに、南半球では左向きに働く。風速が速いほど、また、高緯度であるほど、その力は大きくなる(赤道上ではゼロ)。
  3. 摩擦力:地表面や、空気どうしの粘性によって、風の動きを妨げる方向(風向と逆向き)に働く力。地表に近いほど大きく、上空では無視できるほど小さい。

2. 上空の風:地衡風と傾度風

地表との摩擦が無視できる上空(約1km以上)では、風は、気圧傾度力と転向力の2つの力のつり合いで決まる。

分析中のコレクト コレクトの論理 de 解説:地衡風のメカニズム

等圧線がまっすぐ平行である場合を考えます。

  1. 空気は、まず気圧傾度力によって、高圧側から低圧側へと動き始めます。
  2. 空気が動き始めると、その進行方向の右向きに、転向力が働き始めます。
  3. 風速が速くなるにつれて、転向力も大きくなり、風向はどんどん右へ曲げられていきます。
  4. 最終的に、気圧傾度力と転向力が、大きさが等しく、向きが正反対になったところで、2つの力はつり合います。

このつり合いの状態では、合力はゼロとなり、空気は加速も減速もせず、等圧線に平行に、まっすぐ吹き続けます。この理想的な風を「地衡風」とよびます。日本の天気予報で重要な役割を果たす「偏西風」は、この地衡風に非常に近い風です。

等圧線が円形にカーブしている場合は、遠心力も考慮に入れる必要がある。高気圧のまわりを吹く風や、低気圧・台風のまわりを吹く風を「傾度風」という。

3. 地上の風

地表付近では、摩擦力の影響を無視できない。気圧傾度力、転向力、摩擦力の3つの力がつり合った結果、地上の風は、上空の風(地衡風)に比べて、等圧線を斜めに横切って、低気圧の中心に向かって吹き込む形になる。また、風速も、摩擦によって弱められる。

4. 局地的な風:海陸風と山谷風

地球規模の風とは別に、特定の地域だけで、一日を周期として吹く風がある。

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風の運動は、力のつり合いの作図がカギだ!

  1. 風を動かす3つの力(気圧傾度力、転向力、摩擦力)の「向き」と「特徴」を完璧に覚える。
  2. 「地衡風」が、なぜ等圧線に平行に吹くのかを、「気圧傾度力」と「転向力」のつり合いの図を描いて、論理的に説明できるようにする。
  3. 地上の風が、なぜ等圧線を横切って低気圧に吹き込むのかを、「摩擦力」を加えた3つの力のつり合いで説明できるようにする。
  4. 海陸風と山谷風のメカニズムを、「陸と海の比熱の違い」「斜面の日射と放射冷却」という物理的な理由とセットで理解する。
    昼と夜で、どちらが「あたたまりやすく(冷えやすい)」、どこで「上昇気流」が起きるかを考えるのがポイント。

練習問題

問1:地球の自転によって生じる、北半球で運動方向の右向きに働く見かけの力を何というか。

問2:上空で、気圧傾度力と転向力がつり合って、等圧線に平行に吹く理想的な風を何というか。

問3【論述】:晴れた日の海岸で、昼と夜とで風向が逆転する「海陸風」が吹く。昼に海から陸へ「海風」が吹く理由を、「比熱」「上昇気流」という語句を用いて、55字程度で説明しなさい。

解答と解説

問1の答え:転向力(コリオリの力)

問2の答え:地衡風

問3の解答例:
陸は海より比熱が小さく温まりやすいため、昼は陸上で強い上昇気流が生じ、それを補うように海から風が吹くから。(53字)