地学⑦:火山と火成活動
この記事で探究すること
地球内部は、ほとんどが固体の岩石でできている。それなのに、なぜ、火山の下にはドロドロの「マグマ」が存在するんだろう? この単元では、固体のマントルからマグマが生まれる「部分溶融」のしくみと、そのマグマが、冷え固まる過程で、驚くほど多様な種類の「火成岩」を生み出していく、魔法のような化学変化「マグマの分化作用」について、深く探究していくよ。
1. マグマの発生:部分溶融のメカニズム
マントルは固体のかんらん岩でできているが、特定の条件下で、その一部がとけてマグマとなる。岩石は、純粋な物質とは異なり、融点が一つではない。鉱物の組み合わせによって、とけやすい成分から先にとけ始める。この現象を「部分溶融」という。
コレクトの論理 de 解説:マグマが発生する3つの条件
固体の岩石が部分溶融を開始する条件は、主に3つあります。
- 圧力の低下:海嶺直下では、マントル対流によって高温のマントル物質が上昇してきます。深部から上昇すると、圧力が低下するため、融点が下がり、部分溶融が起きます。これにより、玄武岩質のマグマが生成されます。
- 水の添加:沈み込み帯では、海洋プレートに含まれていた水が、高温高圧下で放出されます。この水が、上盤側のマントル(ウェッジマントル)に加えられると、岩石の融点が劇的に下がり、部分溶融が起きます。日本の火山のマグマは、主にこのメカニズムで生成されます。
- 温度の上昇:マントルの深部から、周囲よりも著しく高温の物質(ホットプルーム)が上昇してくるホットスポットでは、その熱によって上部の岩石が融かされ、マグマが生成されます。
2. マグマの分化作用と火成岩の多様性
マグマだまりの中で、マグマが冷えていく過程で、その化学組成は変化していく。この現象を「マグマの分化作用」という。これにより、もとは同じようなマグマからでも、多様な種類の火成岩が生まれる。
その主なメカニズムが「結晶分化作用」だ。マグマが冷えると、融点が高い鉱物(有色鉱物など)から先に結晶化(晶出)し始める。これらの鉱物は、かんらん石や輝石など、まわりのマグマより密度が大きいため、マグマだまりの底へと沈んでいく。すると、残されたマグマは、先に沈んだ結晶の成分(鉄やマグネシウムなど)を失い、結果として、二酸化ケイ素(SiO₂)や、カリウム、ナトリウムといった成分に富む、より白っぽいマグマへと変化していくんだ。
【具体例】玄武岩質マグマからの分化
例えば、最初にあった黒っぽい「玄武岩質マグマ」が冷えていくと…
① まず、かんらん石や輝石といった、黒っぽい鉱物が結晶化して沈む。
② 残ったマグマは、少し白っぽい「安山岩質マグマ」に変化する。
③ さらに冷えて、角せん石などが沈むと…
④ 残ったマグマは、さらに白っぽい「流紋岩質マグマ」へと変化していくんだ!
【接続・化学】固溶体と元素の分配
豆知識ですが、鉱物の結晶構造は、特定の元素だけを受け入れるわけではありません。例えば、斜長石という鉱物は、ナトリウム(Na)を多く含む曹長石と、カルシウム(Ca)を多く含む灰長石という、2つの純粋な成分が、任意の割合で混じり合った「固溶体」です。マグマが冷える際、初期には高温で安定なCaに富む斜長石が晶出し、分化が進むにつれて、より低温で安定なNaに富む斜長石が晶出します。このように、特定の元素が、液体であるマグマ(液相)と、固体である結晶(固相)の間で、どのように「分配」されるかを研究することが、マグマの複雑な進化の歴史を解明する鍵となります。
受験対策まとめ
マグマの化学は、地学の応用力を試される分野だ!
- マグマが発生する3つの場所(海嶺、沈み込み帯、ホットスポット)と、それぞれの「部分溶融のメカニズム」をセットで説明できるようにする。
「圧力低下」「水の添加」「温度上昇」というキーワードは絶対! - 「マグマの分化作用」の主なメカニズムが「結晶分化作用」であることを理解する。
- 結晶分化作用のプロセスを、論理的に説明できるようにする。
「融点が高い鉱物が先に晶出」→「重いので沈む」→「残ったマグマの組成が変化する」という流れを押さえよう。 - 玄武岩質マグマから、安山岩質→流紋岩質マグマへと分化が進むにつれて、SiO₂の割合が増加し、色が白っぽくなっていくことを理解する。
練習問題
【知識問題】
問1:沈み込み帯において、マントルが部分溶融してマグマが発生する主な原因は何か。
問2:マグマが冷却する過程で、先に晶出した結晶が沈降することで、残りのマグマの化学組成が変化していく作用を何というか。
【論述問題】
問3:海嶺直下では、マントルを構成するかんらん岩は、地表付近よりも高い温度であるにもかかわらず、通常は固体のままである。しかし、それが上昇してくることで、部分溶融が起きて玄武岩質マグマが生成される。その理由を、「圧力」と「融点」という語句を用いて、60字程度で説明しなさい。
解答と解説
問1の答え:水の添加(によって、マントル物質の融点が下がること)
問2の答え:結晶分化作用
問3の解答例:
マントル物質が上昇することで、かかる圧力が低下し、岩石の融点も下がるため、部分溶融が起きてマグマが生成されるから。(57字)