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地学⑩:地表の変化と堆積②
~河川・海洋・氷河が作る地形~

好奇心旺盛なちさまる この記事で探究すること

前回の冒険では、川が上流から下流へ、V字谷や扇状地、三角州といった地形を作っていくことを見たよね。でも、地球の表面を形作っている力は、それだけじゃない。気候変動と大地の隆起が刻んだ「河岸段丘」、波が作り出す海岸の地形、そして、はるか昔に地球をおおっていた「氷河」が残した、壮大な痕跡…。この単元では、さらに多様な地形の成り立ちと、そこに残された地球の記憶を探究していくよ。

1. 河岸段丘:川が作った階段状の地形

川沿いに見られる、階段状の地形を「河岸段丘」という。これは、過去の川の氾濫原(河原や floodplain)が、その後の土地の隆起や、海面変動による侵食基準面の低下によって、川がさらに下方を侵食した結果、取り残されてできた地形だ。

平坦な面(段丘面)は、かつての川底であり、その下には川が運んだ砂礫(段丘堆積物)が堆積している。そして、段丘面と現在の川との間の崖を「段丘崖」という。河岸段丘は、その土地が、侵食と堆積をくり返しながら、段階的に隆起してきたことを示す、動かぬ証拠なんだ。

2. 海岸の地形とその堆積物

海岸線は、波の侵食力(海食)と、沿岸流による堆積作用によって、絶えずその姿を変えている。

3. 深海底の堆積物

陸から遠く離れた、光の届かない深海底にも、気の遠くなるような時間をかけて、堆積物が静かに降り積もっている。

豆知識を話すコレクト 【参考】海洋底の堆積物とCCD

豆知識ですが、炭酸カルシウム(CaCO₃)は、水深が深くなるほど(水圧が高く、水温が低くなるほど)、海水に溶けやすくなる性質があります。このため、炭酸カルシウムが完全に溶けてしまい、石灰質の堆積物が存在できなくなる深度が存在します。この境界深度のことを「炭酸塩補償深度(CCD)」とよびます。

CCDは、現在の太平洋では約4000~5000m、大西洋ではそれよりやや深い深度にあります。したがって、CCDより深い海底では、石灰質軟泥は見られず、代わりにケイ質軟泥や赤色粘土が堆積することになります。

4. 風や氷河による地形

水の働き以外にも、風や氷河が、特徴的な地形を作り出す。

なるほど!と話すちさまる 受験対策まとめ

多様な地形の「名前」と「形成プロセス」を、セットで覚えよう!

  1. 「河岸段丘」が、「土地の隆起(または海水準の低下)」と「川の下方侵食」によって形成されることを、図で説明できるようにする。
  2. 海岸地形を、「侵食地形(海食崖など)」と「堆積地形(砂嘴・砂州など)」に分けて整理する。
  3. 深海底の堆積物を、その起源(生物か非生物か)と化学組成(石灰質かケイ質か)で分類する。
    CCDの概念と、それによって堆積物の種類がどう変わるかを理解しておくこと。
  4. 「U字谷」や「カール」が、「氷河」によって作られた侵食地形であることを覚える。

練習問題

問1:過去の川の氾濫原が、土地の隆起などによって、川沿いに階段状に残された地形を何というか。

問2:炭酸カルシウムの殻を持つプランクトンの死がいが堆積してできた、深海底の堆積物を何というか。

問3【論述】:太平洋の、水深6000mの海底から採取された堆積物のコアを分析した。このコアの最上部(現在)の堆積物は、主に何であると予想されるか。また、そのように予想できる理由を、「炭酸塩補償深度(CCD)」という語句を用いて、50字程度で説明しなさい。

解答と解説

問1の答え:河岸段丘

問2の答え:石灰質軟泥

問3の解答例:
予想される堆積物:赤色粘土(またはケイ質軟泥)。
理由:水深6000mは炭酸塩補償深度より深いため、炭酸カルシウムの殻は海水に溶けてしまい、堆積できないから。(51字)