地学⑪:地層分布と地層の連続、地質年代
この記事で探究すること
大地に残された歴史書、「地層」。そのページを正しく読み解くには、特別な技術が必要だ。この単元では、地層の傾きを記録する方法(走向と傾斜)から、地下の構造を立体的に推理するための地図「地質図」の読み方、そして、はなれた場所の地層が同じ時代のものだと証明する「対比」の技術まで、地質学の基本的な探査手法をマスターする。君も、大地の歴史を解読する、地質学者になろう!
1. 地層の観察と記録:走向と傾斜
野外で地層を観察する際、その地層が、空間的にどのような姿勢をとっているかを記録する必要がある。そのための指標が「走向」と「傾斜」だ。
- 走向:地層面と、水平面が交わる直線の方向。地図上で、北を基準に、東回りまたは西回りの角度(例:N30°E)で表す。
- 傾斜:地層面が、水平面からどれだけ傾いているかを示す角度。走向と直角の方向で、最も傾きが急な角度を測定する(例:45°SE、南東に45°傾斜)。
この走向・傾斜を、クリノメーターという道具を使って測定し、地形図上にルートに沿って記録したものが「ルートマップ」であり、地質調査の基本となる。
2. 地質図と地質構造
広範囲の地層の分布や、走向・傾斜、断層などの情報を、地図上にまとめたものが「地質図」だ。地質図を読み解くことで、地表からは見えない地下の立体的な地質構造(しゅう曲や断層の広がり)を推定することができる。
また、ボーリング調査によって得られる、地下の地層の重なりを柱状に示した「柱状図」を複数比較することで、地層の傾きや、断層による「ずれ」の大きさを、より正確に知ることができる。
3. 地層の対比:離れた地層をつなぐ
離れた場所で見つかった地層が、同じ時代に堆積したものかどうかを判断することを「地層の対比」という。そのための最も強力な手がかりが「鍵層(かぎそう)」だ。
コレクトの論理 de 解説:鍵層の条件と種類
鍵層として有効であるためには、「広範囲に」「短時間に」「いっせいに」堆積したという3つの条件を満たす必要があります。その特徴から、他の地層と明確に区別できる必要があります。
- 火山灰層(凝灰岩層):大規模な火山の噴火によって、広範囲に火山灰が降り積もってできる層。最も代表的で、信頼性の高い鍵層。
- 特定の化石を多量に含む層:ある特定の時代に、特定の環境で生物が異常繁殖した場合など。
- 古地磁気による対比:地磁気の逆転は、地球規模で同時に起こるイベントです。地層に残された残留磁気の向きを調べることで、地磁気逆転のパターンを時間軸の「ものさし」として、地層を対比することができます。
4. 地質年代区分
地層の上下関係(地層累重の法則)や、示準化石の変遷、そして放射年代測定によって、地球46億年の歴史は、階層的に区分されている。これを「地質年代」という。最大の区分単位は「代」であり、古い順に、先カンブリア時代、古生代、中生代、新生代と分けられる。
【研究】ジルコン年代測定
豆知識ですが、地球最古の岩石や鉱物は、どのようにして年代が測定されたのでしょうか? その鍵を握るのが、「ジルコン」という非常に硬く、化学的に安定した鉱物です。ジルコンの結晶が形成される際、微量のウラン(U)は取り込みますが、鉛(Pb)はほとんど取り込みません。ジルコン中のウランは、時間とともに放射性崩壊して鉛に変わっていきます。したがって、ジルコンに含まれるウランと鉛の同位体比を精密に測定することで、そのジルコンが結晶化してからの時間を、極めて正確に求めることができるのです(U-Pb法)。西オーストラリアで発見された約44億年前のジルコン粒子は、地球が誕生して間もない頃の地殻の存在を示唆する、貴重な証拠となっています。
受験対策まとめ
地質調査の技術は、思考問題の宝庫だ!
- 「走向・傾斜」の意味と、地質図記号を理解する。
走向線と、傾斜を示す短い線の関係性を、立体的にイメージできるように。 - 複数の柱状図から、地層の傾斜方向や、断層の存在を読みとる問題は超頻出。
「鍵層」を見つけ出し、その標高を比較することが、すべての基本! - 地層の対比に用いられる「鍵層」の好条件(広範囲、短時間)と、その代表例(火山灰層)を覚える。
- 地質年代の大きな区分(先カンブリア時代、古生代、中生代、新生代)と、その境界となった大事件(生物の大量絶滅など)を理解する。
練習問題
問1:地層面と水平面が交わる直線の方向を何というか。
問2:地層の対比に用いられる、広範囲に短時間で堆積した、目印となる地層を何というか。その最も代表的な例も一つあげなさい。
問3【論述】:ある地域の、標高が異なるA地点とB地点でボーリング調査を行った。両方の柱状図に、同じ火山灰層が見られたが、A地点(標高100m)では地表から20mの深さに、B地点(標高80m)では地表から15mの深さにあった。この地域の地層は、どちらの方向に、どのように傾いていると考えられるか。理由とともに55字程度で説明しなさい。
解答と解説
問1の答え:走向
問2の答え:
名称:鍵層
例:火山灰層(凝灰岩層)
問3の解答例:
B地点からA地点の方向に傾いている。火山灰層の標高はA地点で80m、B地点で65mであり、B地点の方が低いため。(56字)