地学㉙:恒星の誕生と進化・銀河系
この記事で探究すること
星は、いつか生まれて、いつか死んでいく、僕たちと同じ生命のような存在だ。この単元では、星の材料である「星間雲」から、赤ちゃん星「原始星」が生まれ、やがて一人前の「主系列星」となり、そして、その質量に応じた、多様な最期を迎えるまで、恒星の壮大な一生の物語を探究するよ。そして、その星々が集う、我々の故郷「銀河系」の本当の姿にもせまっていく。
1. 恒星の誕生:星間雲から原始星、そして主系列星へ
恒星は、宇宙空間にただよう、低温で高密度なガスや塵の集まり「星間雲(分子雲)」の中で生まれる。星間雲の一部が、何らかのきっかけで自らの重力で収縮を始め(重力収縮)、中心部の密度と温度が上昇していく。この、まだ核融合が始まっていない、生まれたての星を「原始星」という。
原始星は、重力収縮によって解放されるエネルギーで輝く。収縮がさらに進み、中心部の温度が約1000万Kに達すると、ついに水素の核融合反応が点火する。核融合による内側から外側への圧力と、自らの重力による内側への圧力がつり合った、安定した状態の星。これこそが、恒星が一生のほとんどを過ごす「主系列星」だ。
2. 恒星の寿命と進化
恒星の寿命は、その質量によって、ほぼ決定される。質量が大きい星ほど、中心部の温度と圧力が高く、核融合反応が激しく進むため、燃料である水素を、猛烈な勢いで消費してしまう。その結果、質量が大きい星ほど、寿命は短くなる。
中心部の水素を使い果たすと、恒星は主系列の段階を終え、その質量に応じた、進化の最終段階へと向かう。
- 太陽程度の質量の星:中心核が収縮する一方で、外層は膨張して「赤色巨星」となる。やがて、外層のガスは宇宙空間へ放出され(惑星状星雲)、中心には「白色矮星」が残される。
- 太陽より8倍以上重い星:中心部で、ヘリウム、炭素、酸素…と、次々に重い元素の核融合が進む。最終的に、鉄の核ができた段階で核融合は止まり、自らの重力を支えきれなくなって、大崩壊(重力崩壊)を起こす。その反動で、星全体が吹き飛ぶ「超新星爆発」を起こし、中心には「中性子星」や「ブラックホール」が残される。
3. 銀河系の構造と観測
わたしたちの太陽系が属している、約2000億個の恒星の大集団。それが「銀河系(天の川銀河)」だ。銀河系の中にいる我々にとって、その全体像を直接見ることはできない。しかし、様々な観測技術によって、その構造が明らかになってきた。
コレクトの論理 de 解説:銀河系の構造
銀河系は、中心に棒状の構造を持つ「棒渦巻銀河」だと考えられています。その構造は、主に以下の3つの部分からなります。
- バルジ:銀河系の中心部にある、恒星が密集した、球状のふくらみ。年老いた赤い星が多い。
- 円盤(ディスク):バルジを取り巻く、薄い円盤状の部分。若い青い星や、星の材料となる星間雲が豊富な「渦状腕(スパイラルアーム)」を持つ。太陽系は、この円盤部にある。
- ハロー:バルジと円盤全体を、球状に大きく取り巻く、希薄な恒星やガス、そして、正体不明の暗黒物質(ダークマター)が分布する領域。年老いた星からなる「球状星団」も、このハローに分布する。
コレクトの発展ラボ:脈動変光星と銀河系の大きさ
豆知識ですが、銀河系の大きさを測る上で、決定的な役割を果たしたのが、周期的に明るさを変える「脈動変光星」です。特に、セファイド(ケフェイド)変光星には、変光周期が長いほど、真の明るさ(絶対等級)が明るいという、極めて規則的な「周期-光度関係」があることが知られています。
遠方の星団にあるセファイド変光星の変光周期を測定すれば、その真の明るさがわかります。そして、観測から得られる「見かけの明るさ」と比較することで、等級式を用いて、その星団までの距離を、正確に求めることができるのです。この「標準光源」としての役割によって、銀河系の大きさや、他の銀河までの距離が、次々と明らかにされていきました。
受験対策まとめ
恒星の一生と、我々の故郷・銀河系の姿を、立体的に理解しよう!
- 恒星誕生のプロセスを、順番に説明できるようにする。
「星間雲」→(重力収縮)→「原始星」→(核融合開始)→「主系列星」 - 「質量が大きい星ほど、寿命は短い」という大原則を、その理由(核融合反応が激しい)と共に理解する。
- 恒星の最期を、質量によって2つのルートに分けて覚える。
- 太陽程度の質量 → 赤色巨星 → 白色矮星
- 太陽よりずっと重い質量 → 超新星爆発 → 中性子星/ブラックホール
- 銀河系の基本構造(バルジ、円盤、ハロー)と、太陽系の位置(円盤部)を覚える。
- 脈動変光星(セファイド)の「周期-光度関係」が、宇宙の距離を測る「ものさし」として、極めて重要であることを理解する。
練習問題
問1:星間雲が自らの重力で収縮してできる、核融合が始まる前の、生まれたての星を何というか。
問2:恒星が、その一生の大部分を過ごす、HR図上で左上から右下にかけての帯状の領域を何というか。
問3【論述】:太陽よりもずっと質量の大きい恒星は、太陽よりも寿命が短い。その理由を、「質量」「核融合反応」という語句を用いて、55字程度で説明しなさい。
解答と解説
問1の答え:原始星
問2の答え:主系列星
問3の解答例:
質量が大きいほど、中心部の温度と圧力が高く、燃料である水素を消費する核融合反応が、爆発的に激しく進むため。(53字)