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地学㉖:太陽の活動

好奇心旺盛なちさまる この記事で探究すること

わたしたちの太陽は、ただ静かに燃えているだけの火の玉じゃない。その表面では、黒点が出現・消滅し、ときには「フレア」と呼ばれる巨大な爆発を起こすなど、ダイナミックな活動をくり返しているんだ。この単元では、太陽の基本的なプロフィールから、その活動周期、そして、太陽活動が地球にどのような影響をあたえるのか、「宇宙天気」という最前線の科学を探究していくよ。

1. 太陽の大きさと構造

太陽は、直径が地球の約109倍、質量が約33万倍にも達する、巨大なガスの球だ。その莫大なエネルギーは、中心核で起きる核融合反応によって生み出されている。

2. 太陽のスペクトルと大気

太陽の光(可視光線)を、分光器でくわしく調べると、虹色の連続した光(連続スペクトル)の中に、無数の暗い線が見られる。これを「吸収スペクトル(フラウンホーファー線)」という。これは、光球から出た光が、その外側にある、より温度の低い太陽の大気(彩層)を通過する際に、大気に含まれる特定の原子(水素、ヘリウム、ナトリウムなど)によって、特定の波長の光が吸収された痕跡だ。この吸収線の位置と強さを分析することで、太陽の大気の化学組成を知ることができる。

3. 太陽の活動と約11年周期

太陽の活動は、常に一定ではない。その最もわかりやすい指標が「黒点」の数だ。黒点の数は、約8日から15日程度の周期で増減しながら、約11年という、より大きな周期で、数が非常に多くなる「極大期」と、ほとんどなくなる「極小期」をくり返している。これを太陽活動周期という。

黒点は、太陽の強力な磁場が、対流をさまたげることで、まわりよりも温度が低くなっている領域だと考えられている。太陽活動が活発な極大期には、黒点付近の磁場のエネルギーが、一気に解放される、巨大な爆発現象「フレア」が頻繁に発生する。

警告するコレクト 【研究】宇宙天気予報とデリンジャー現象

大規模なフレアが発生すると、強力なX線や、高エネルギーの荷電粒子(太陽プロトン)が、地球へと飛来します。これらは、地球の社会インフラに、様々な影響を及ぼす可能性があります。この、太陽活動に起因する地球周辺の宇宙環境の変化を予測するのが「宇宙天気予報」です。

  • デリンジャー現象:フレアによって放出されたX線が、地球の電離層の電子密度を急増させ、短波通信の電波を吸収してしまうことで、数分~数時間にわたって、通信障害(特に遠距離無線)を引き起こす現象。
  • 磁気嵐:高エネルギーのプラズマの塊(コロナ質量放出)が地球に到達すると、地球の磁気圏が大きく乱され、大規模な停電や、人工衛星の故障などを引き起こすことがある。

宇宙天気予報は、現代社会のインフラを守る上で、ますますその重要性を増しています。

なるほど!と話すちさまる 受験対策まとめ

太陽の物理は、エネルギーと活動周期がカギだ!

  1. 太陽のエネルギー源が、中心核での「核融合反応」であることを覚える。
    (具体的には、4つの水素原子核→1つのヘリウム原子核)
  2. 太陽の内部構造(中心核、放射層、対流層)を、中心から順番に覚える。
  3. 太陽のスペクトルに見られる暗線が「吸収スペクトル」であり、太陽大気の成分を知る手がかりとなることを理解する。
  4. 太陽活動が、約11年周期で変動し、その指標が「黒点数」であることを覚える。
  5. 太陽活動が活発なときに発生する「フレア」が、地球に「デリンジャー現象」や「磁気嵐」といった影響を及ぼすことを関連づけて理解する。

練習問題

問1:太陽の中心核で、4つの水素原子核から1つのヘリウム原子核が作られる際に、莫大なエネルギーが生じる反応を何というか。
問2:太陽の光を分光した際に見られる、多数の暗線を何というか。また、この暗線から、太陽の何を知ることができるか。
問3【論述】:太陽活動の極大期には、地球上でどのような影響が懸念されるか。太陽の爆発現象の名称と、その結果として地球に到達するものを明らかにし、具体的な影響の例を2つあげて、55字程度で説明しなさい。

解答と解説

問1の答え:核融合反応

問2の答え:
名称:吸収スペクトル(フラウンホーファー線)
わかること:太陽の大気の化学組成

問3の解答例:
フレアによりX線や荷電粒子が到達し、デリンジャー現象による通信障害や、磁気嵐による大規模な停電などが懸念される。(56字)