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地学㉑:日本の四季と大気

好奇心旺盛なちさまる この記事で探究すること

春の周期的な天気、長く続く梅雨、うだるような夏の暑さ、そして、厳しい冬の寒さと大雪…。日本の四季が、これほどまでに豊かな表情を見せるのはなぜだろう? この単元では、これまで学んできた「気団」「前線」「高気圧・低気圧」の知識を総動員して、それぞれの季節を特徴づける気圧配置と、それがもたらす天気のメカニズムを、天気図レベルで、具体的に探究していくよ。

1. 冬:西高東低と北西季節風

冬の日本は、典型的な「西高東低」の気圧配置となる。大陸に君臨する冷たく乾燥したシベリア高気圧(シベリア気団)から、日本の東海上に位置するアリューシャン低気圧に向かって、強い北西の季節風が吹きつける。

この季節風が、比較的暖かい日本海を渡る際に、大量の水蒸気を補給し、雪雲を発達させる。そして、日本の背骨である山脈にぶつかることで、日本海側に世界でも有数の豪雪をもたらす。山を越えた風は、乾燥した「からっ風」となり、太平洋側には、乾燥した晴天が続く。

2. 春・秋:移動性高気圧と温帯低気圧

春と秋は、大陸からちぎれてやってくる移動性高気圧と、その間をうめるように発生する温帯低気圧が、偏西風に乗って、交互に日本付近を通過する。そのため、天気は「三寒四温」のように、数日の周期で、晴れと雨をくり返す。

温帯低気圧は、中心から南東に温暖前線を、南西に寒冷前線を伴っており、その通過とともに、特徴的な天気の変化をもたらす。

3. 梅雨:梅雨前線(停滞前線)

初夏になると、北の冷たく湿ったオホーツク海気団と、南の暖かく湿った小笠原気団(北太平洋高気圧)の勢力が、日本の上空でほぼ同じになり、ぶつかり合う。この2つの気団の境目にできるのが、ほとんど動かない「梅雨前線(停滞前線)」だ。

この前線付近では、長期間にわたって、曇りや雨の日が続く。特に、前線上に低気圧が発生・通過すると、活動が活発化し、大雨となることが多い。秋にできる停滞前線は「秋雨前線」とよばれる。

4. 夏:南高北低と夏の猛暑

梅雨が明けると、日本の南東海上に勢力を広げた、高温多湿な小笠原気団(北太平洋高気圧)に、日本列島はすっぽりと覆われる。典型的な「南高北低」の気圧配置となり、安定した晴天と、厳しい暑さ、そして、湿度の高い「むし暑さ」が続く。南東の季節風が卓越する。

近年、都市部のヒートアイランド現象や、地球温暖化の影響、そして、偏西風の蛇行などが組み合わさり、これまでに経験したことのないような「異常な猛暑」が、頻発するようになっている。

警告するコレクト 【研究・防災】線状降水帯

近年、梅雨の末期や、台風の接近時に、「線状降水帯」による集中豪雨が、甚大な災害を引き起こしています。これは、積乱雲が、次々と発生し、風に流されて、線状に連なることで、数時間にわたって、同じ場所に猛烈な雨を降らせ続ける現象です。

その発生には、暖かく非常に湿った空気の流入や、上空の風、地形などが、複合的に関係していると考えられていますが、その詳細な発生メカニズムや、正確な予測は、まだ研究の途上にあります。気象庁は、この線状降水帯が発生する可能性が高い場合に、「顕著な大雨に関する情報」を発表し、最大級の警戒を呼びかけています。

なるほど!と話すちさまる 受験対策まとめ

日本の四季は、気団と気圧配置のパターン認識がすべてだ!

  1. 4つの気団と、4つの季節の典型的な気圧配置(西高東低、南高北低など)を、天気図のイメージと完全にリンクさせる。
  2. 冬の季節風による日本海側の大雪のメカニズムは、論述問題の最頻出テーマ。「シベリア気団」「日本海での水蒸気補給」「山脈による強制上昇」の3点セットで説明できるようにする。
  3. 温帯低気圧に伴う、温暖前線と寒冷前線の通過順と、それに伴う気温・風向の変化を、時系列で完璧に説明できるようにする。
  4. 梅雨前線が「オホーツク海気団」と「小笠原気団」のせめぎあいでできる「停滞前線」であることを、他の前線と区別して理解する。
  5. 「線状降水帯」が、集中豪雨をもたらす危険な現象であることを、近年の時事問題として認識しておく。

練習問題

【知識問題】
問1:冬の日本の天気を特徴づける、大陸に高気圧、日本の東に低気圧が位置する気圧配置を、漢字4文字で答えなさい。
問2:梅雨の時期に、日本の南岸に停滞する前線(梅雨前線)を形成する、北の冷たい気団と、南の暖かい気団の名前を、それぞれ答えなさい。

【論述問題】
問3:温帯低気圧が、日本の西から東へ通過していくとき、ある観測点の気温は、一般的にどのように変化すると考えられるか。「温暖前線」「寒冷前線」という語句を用いて、変化の順番がわかるように、45字程度で説明しなさい。

解答と解説

問1の答え:西高東低

問2の答え:
北の気団:オホーツク海気団
南の気団:小笠原気団(北太平洋高気圧)

問3の解答例:
まず温暖前線が通過して気温が上昇し、その後、寒冷前線が通過することで、気温は再び下降する。(45字)