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地学④:プレートテクトニクス①
~大陸移動説から海洋底拡大説へ~

好奇心旺盛なちさまる この記事で探究すること

「大陸は動く」…今でこそ当たり前のこの考え方も、ほんの100年前までは、奇想天外なトンデモ説だと考えられていたんだ。この単元では、ドイツの気象学者ウェゲナーが提唱した「大陸移動説」が、どのような証拠に基づいていたのか、そして、なぜ一度は否定され、その後、海底探査という新たな証拠によって、どのように「プレートテクトニクス」として復活を遂げたのか、科学史上の大逆転劇を探究するよ。

1. ウェゲナーの大陸移動(漂移)説

1912年、ウェゲナーは、かつて大陸が一つにまとまった超大陸(パンゲア)を形成しており、それが分裂して現在の位置まで移動した、という「大陸移動説」を発表した。彼は、その証拠として、以下の4つをあげた。

考え中のちさまる ちさまるといっしょに考えよう!

これだけたくさんの証拠があったのに、どうしてウェゲナーの説は、当時の科学者たちに受け入れられなかったんだろう?

それは、ウェゲナーが、大陸を動かすための「原動力」を、物理的に正しく説明できなかったからだ。「大陸が、固い海洋底の上をすべるように動く」という彼のモデルは、物理学者から「ありえない」と一蹴されてしまった。大陸移動説は、原動力という最も重要なピースが欠けていたため、その後、数十年にわたって忘れ去られてしまうんだ。

2. 理論復活の狼煙:古地磁気学と海洋底探査

大陸移動説が復活するきっかけは、まったく別の分野の研究からもたらされた。

3. 海洋底拡大説の提唱

1960年代初頭、これらの新たな証拠を統合し、ヘスやディーツは、大陸移動説を復活させる、画期的な新説を提唱した。それが「海洋底拡大説」だ。

分析中のコレクト コレクトの論理 de 解説:海洋底拡大説の骨子

海洋底拡大説の要点は、以下の通りです。

  1. 海嶺は、マントル対流が上昇してくる場所であり、ここで新しい海洋底(プレート)が、左右に次々と生産されている。
  2. 大陸は、この動く海洋底(プレート)の上に「乗って」いるだけであり、ベルトコンベアのように、受動的に運ばれていく。
  3. 地球の大きさが一定である以上、どこかで海洋底は消滅しているはずだ。その場所が海溝であり、ここで古い海洋底が、マントルの中へと沈み込んでいる。

この説は、ウェゲナーが説明できなかった「原動力」の問題を、「マントル対流」という物理的なメカニズムで説明し、大陸が「海洋底の上をすべる」のではなく、「海洋底と一緒に動く」という、全く新しいパラダイムを提示したのです。

4. 海洋底拡大説の決定的証拠:磁気異常の縞模様

海洋底拡大説を、仮説から、科学的「事実」へと昇華させた決定的な証拠が、海底の地磁気探査によって発見された「磁気異常の縞模様」だ。

海洋底の岩石(玄武岩)には、それが海嶺でできた当時の地磁気の向きが、残留磁気として記録されている。過去に、地磁気のN極とS極が何度も逆転してきたことは、すでにわかっていた。もし、海洋底が海嶺で次々と作られ、両側へ拡大しているならば、海底には、地磁気逆転の歴史が、まるでテープに記録されるように、海嶺を軸として、左右対称の縞模様として記録されているはずだ。そして、実際の探査結果は、この予測と完璧に一致した。これは、海洋底拡大説の、動かぬ証拠となった。

なるほど!と話すちさまる 受験対策まとめ

プレートテクトニクス前史は、科学史の流れを理解することが重要だ!

  1. ウェゲナーの大陸移動説の「4つの証拠」を覚える。(地形、地質、化石、氷河)
  2. 大陸移動説が、当初受け入れられなかった最大の理由が「原動力を説明できなかった」ことであることを理解する。
  3. 「海洋底拡大説」の3つの骨子(①海嶺で生まれ、②大陸を乗せて動き、③海溝で沈む)を説明できるようにする。
  4. 海洋底拡大説の決定的証拠が「磁気異常の縞模様」であり、それが「海嶺を軸に左右対称」であることの意味を理解する。