地学⑧:造山帯、変成作用と変成岩
この記事で探究すること
ヒマラヤ山脈や、日本列島のような、長く連なる巨大な山脈。これらは、プレート運動によって、大地が激しく変形することで作られてきたんだ。この「山を作る運動」=「造山運動」が活発な場所を「造山帯」という。この単元では、造山帯で何が起きているのか、そして、その過程で岩石が熱や圧力で全く別の岩石に生まれ変わる「変成作用」のふしぎについて、深く探究していくよ。
1. 造山運動と2つのタイプの造山帯
プレートの収束境界では、巨大な圧縮力が働き、地殻が厚く盛り上がる大規模な地殻変動、造山運動が起きる。造山運動が活発な地域は、帯状に分布しており、これを造山帯という。世界の主要な造山帯は、衝突するプレートの種類によって、大きく2つのタイプに分けられる。
- 大陸衝突型造山帯:大陸プレートどうしが衝突する場所。どちらのプレートも密度が小さく沈み込みにくいため、地殻が激しくしゅう曲・隆起し、ヒマラヤ山脈のような、極めて標高の高い大山脈を形成する。
- 島弧-海溝型造山帯:海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む場所。日本列島が、この典型例である。火山活動が活発で、プレートの沈み込みにともなう複雑な地殻変動が起きる。
2. 付加体:大陸を成長させるメカニズム
島弧-海溝型造山帯では、大陸地殻が成長していく、ユニークなプロセスが起きている。沈み込む海洋プレートの上には、海洋生物の死がいや、陸から運ばれた土砂などが、長い時間をかけて堆積している。海洋プレートが沈み込む際に、これらの柔らかい堆積物が、陸側のプレートの縁に、バターをナイフでそぎ取るように、はがし取られて押し付けられる。こうしてできた、複雑に変形した地層の塊を「付加体」という。
日本列島の陸地の多くは、大昔の海洋プレートの沈み込みによって、次々と大陸の縁に付け加わっていった、この「付加体」からできている。つまり、日本列島は、海の底の堆積物がリサイクルされてできた、大陸成長の最前線なんだ。
3. 変成作用:岩石の再結晶
既存の岩石が、もともと形成された場所とは異なる、高い温度や圧力の環境に置かれると、鉱物の組み合わせや組織が変化し、別の岩石に生まれ変わることがある。この、固体のまま岩石が再結晶する現象を「変成作用」といい、それによってできた岩石を「変成岩」という。
コレクトの論理 de 解説:変成作用の2タイプ
変成作用は、熱と圧力のどちらが主役かによって、大きく2つに分類されます。
- 広域変成作用
- 場:プレートの収束境界など、広範囲にわたって、高い圧力が働く場所。
- 特徴:岩石が押しつぶされるため、鉱物が一定方向に配列した「片理」や「片麻状組織」といった、しま模様が発達する。
- 変成岩の例:泥岩が変成→結晶片岩、花こう岩が変成→片麻岩
- 備考:沈み込み帯では、温度があまり上がらないうちに、急激に圧力がかかる「高圧低温型」の変成作用が起きる。
- 接触変成作用
- 場:マグマだまりの周辺など、局所的に高い熱の影響を受ける場所。
- 特徴:圧力が低いため、方向性のない、緻密で硬い組織を持つ。
- 変成岩の例:泥岩や砂岩が、熱で焼き固められてできたホルンフェルス。
コレクトの発展ラボ:変成作用と多形
豆知識ですが、同じ化学組成(Al₂SiO₅)を持つ鉱物でも、温度と圧力の条件によって、異なる結晶構造をとることがあります。これを「多形(たけい)」とよびます。Al₂SiO₅の多形鉱物である、藍晶石(高温高圧)、紅柱石(高温低圧)、珪線石(さらに高温)は、その変成岩が経験した温度・圧力条件を知るための、優れた「ものさし」として利用されます。
受験対策まとめ
造山帯と変成岩は、プレート理論の応用編だ!
- 2つの造山帯タイプ(大陸衝突型、島弧-海溝型)と、その代表例(ヒマラヤ、日本)を覚える。
- 「付加体」が、どのようにして形成されるのかを、図で説明できるようにする。
「海洋プレート上の堆積物」が「はがし取られて」「大陸側に押し付けられる」というプロセスが重要。 - 「広域変成作用」と「接触変成作用」の、主な原因(圧力/熱)と、できる岩石の特徴(しま模様がある/ない)を、対比させて完璧に理解する。
- それぞれの変成作用の代表的な岩石(結晶片岩、ホルンフェルス)を覚える。
練習問題
問1:海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む際に、海洋プレート上の堆積物がはがし取られて、大陸側に押し付けられてできた地質体を何というか。
問2:既存の岩石が、主にマグマの熱の影響を受けて再結晶し、硬く緻密な岩石に変化する作用を何というか。
問3【論述】:プレートの沈み込み帯では、特徴的な2種類の変成作用が、対になって(ペアで)産出することが知られている。海溝側では低温高圧型の広域変成作用が、島弧(火山フロント)側では高温低圧型の接触変成作用が起きる。なぜ、このような分布になるのか、「プレート」と「マグマ」という語句を用いて、55字程度で説明しなさい。
解答と解説
問1の答え:付加体
問2の答え:接触変成作用
問3の解答例:
海溝側では冷たいプレートが沈み込み、島弧側ではその下のマントルから上昇してきたマグマの熱で岩石が変成されるため。(56字)