地学⑮：日本列島の歴史

この記事で探究すること

わたしたちが住む、この日本列島。その原型は、いつ、どのようにして生まれたんだろう？ 実は、日本列島の大部分は、もともとアジア大陸の一部だったんだ。この単元では、超大陸の分裂から始まり、大陸の縁辺で次々と「付加」されて成長し、やがて大陸から引き裂かれて現在の島弧の形になるまで、日本列島が経験してきた、ダイナミックで壮大な歴史を探究していくよ。

1. 古生代～中生代：大陸の縁辺での「付加」による成長

約5億年前、日本列島の原型となる岩石は、まだゴンドワナ大陸（後の超大陸パンゲアの一部）の縁辺にあった。その後、プレート運動にともない、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む「沈み込み帯」が、アジア大陸の東縁に形成される。

この沈み込み帯で、数億年という長い時間をかけて、海洋プレート上の堆積物（サンゴ礁の石灰岩、放散虫のチャートなど）が、次々と大陸側に剥ぎ取られて押し付けられる「付加作用」が起きた。こうして形成された付加体が、現在の日本列島の基盤岩の大部分を構成している。西南日本の外帯に見られる、美しい帯状構造は、まさにこの大陸成長の歴史を物語る、動かぬ証拠なんだ。

2. 新生代 新第三紀：日本海の拡大と日本列島の誕生

約2500万年前まで、日本列島は、まだアジア大陸の東の縁に、陸続きでくっついていた。しかし、このころ、背後の大陸側でマントルの上昇流が起き、大陸の地殻が引き伸ばされ、裂け始めた。この巨大な地殻の裂け目に、海水が流れ込んで形成されたのが、日本海である。

コレクトの論理 de 解説：観音開きの拡大モデル

日本海の拡大は、単純に大陸が東西に引き裂かれたわけではありません。地質学的証拠から、西南日本と東北日本が、それぞれ、ある点を中心に回転しながら開いていった「観音開きモデル」が提唱されています。

• 西南日本：ユーラシアプレートの南東縁を軸に、時計回りに回転。
• 東北日本：北海道の南西沖あたりを軸に、反時計回りに回転。

この複雑な回転運動によって、本州の中央部は大きく折れ曲がり、巨大な溝であるフォッサマグナが形成されたと考えられています。日本海の拡大と、フォッサマグナの形成は、密接に連動したイベントなのです。

この日本海の拡大によって、日本列島は、大陸から完全に切り離され、現在の弓なりの島弧（アイランドアーク）の形が、ほぼ完成したんだ。

3. 新生代 第四紀：現在の日本列島へ

約260万年前から始まる第四紀は、氷期と間氷期をくり返す、氷河時代だ。氷期には、海水面が現在よりも100m以上も低下したため、日本列島は、再び大陸と陸続きになった。このとき、大陸からマンモスなどの大型哺乳類や、旧石器時代の人類が、日本列島へ渡ってきたと考えられている。

そして、火山活動も、この時代に非常に活発になった。現在の日本の主要な火山体の多くは、この第四紀に形成されたものだ。

【接続・日本史】縄文海進と貝塚の分布

豆知識ですが、最後の氷期が終わった後、約7000年前の縄文時代前期には、気候が温暖化し、海水面が現在よりも数m高くなりました。これを「縄文海進」とよびます。このとき、関東平野の奥深くまで、海が入り込んでいました。日本史で学ぶ、縄文時代の「貝塚」が、現在の海岸線から遠く離れた、内陸部（さいたま市など）からも発見されるのは、まさにこの縄文海進の科学的な証拠なのです。

受験対策まとめ

日本列島の歴史は、３つの大きなステップで理解しよう！

1. 古生代～中生代：「付加体」によって、大陸の縁辺で成長した時代。
   西南日本の帯状構造が、その証拠。
2. 新生代 新第三紀：「日本海の拡大」によって、大陸から分離し、現在の島弧の形ができた時代。
   「観音開きモデル」と「フォッサマグナの形成」をセットで理解する。
3. 新生代 第四紀：「氷河時代」の海水準変動と、活発な火山活動の時代。
   氷期に大陸と陸続きになったこと、縄文海進などを押さえておこう。

練習問題

問１：現在の日本列島の基盤岩の大部分を構成している、海洋プレート上の堆積物が大陸側に押し付けられてできた地質体を何というか。

問２：新生代新第三紀に、日本列島がアジア大陸から分離して、現在の島弧の形が作られるきっかけとなった、背後にある海の拡大事件を何というか。

問３【論述】：本州の中央部に存在する、巨大な地溝帯であるフォッサマグナは、どのようにして形成されたと考えられているか。「日本海の拡大」という語句を用いて、60字程度で説明しなさい。