地学⑭:日本列島の成り立ち
この記事で探究すること
地震、火山、温泉、そして、変化に富んだ美しい四季と地形…。わたしたちが暮らす日本列島の個性は、その成り立ちと深く関わっているんだ。この単元では、日本列島が、なぜ世界でも有数の「変動帯」なのか、その原因である4つのプレートの動きと、その結果として生まれた、複雑でダイナミックな地質構造について、日本列島を解剖するように、くわしく探究していくよ。
1. 弧-海溝系としての日本列島
日本列島の最も基本的な特徴は、それが、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む、典型的な「弧-海溝系」であるということだ。具体的には、東から太平洋プレートが、南からフィリピン海プレートが、日本列島が乗る北アメリカプレートとユーラシアプレートの下へと、それぞれ沈み込んでいる。この複雑なプレートのせめぎあいが、日本の活発な地殻変動のすべての源となっている。
2. 日本列島の地質構造区分
日本列島は、地質学的に、いくつかの大きな構造線によって分けられ、それぞれ異なる歴史を持つ地塊の寄せ集まりでできている。
- フォッサマグナ:「大きな溝」を意味する、本州中央部を南北に縦断する巨大な地溝帯。その西縁は糸魚川-静岡構造線、東縁は新発田-小出構造線および柏崎-千葉構造線とされる。この線を境に、日本の地質は大きく東北日本と西南日本に分けられる。
- 西南日本の帯状構造:西南日本は、さらに中央構造線を境に、内帯(日本海側)と外帯(太平洋側)に分けられる。特に外帯には、古い時代の付加体が、北西から南東へ、時代が新しくなるように、帯状に配列している(帯状構造)。これは、過去に、海洋プレートが次々と沈み込み、その堆積物を大陸側に付け加えてきた、大陸成長の歴史を物語っている。
【研究】2つの三重会合点(トリプルジャンクション)
日本周辺には、3つのプレートの境界が一点で交わる「三重会合点(トリプルジャンクション)」が、2つも存在します。一つは、房総半島沖の、太平洋プレート・フィリピン海プレート・北アメリカプレートが会する場所。もう一つは、駿河湾沖の、フィリピン海プレート・北アメリカプレート・ユーラシアプレートが会する場所です。このような複雑で不安定なプレート配置が、関東地方周辺で、多様なタイプの地震が頻発する一因となっています。
3. 巨大噴火とカルデラ
日本列島の火山活動史の中では、通常の山体形成とは比較にならないほど、大規模な噴火(巨大噴火)が、過去に何度も起きてきた。巨大噴火では、膨大な量のマグマが一気に噴出するため、マグマだまりがあった場所の地面が、大規模に陥没する。こうしてできた、円形またはそれに近い、巨大なくぼ地を「カルデラ」という。
巨大噴火の際には、大規模な火砕流が発生し、広範囲にわたって「火砕流台地」を形成する。また、噴き上げられた火山灰は、偏西風に乗って、日本列島の広範囲、ときには太平洋上にまで降り積もり、地層の対比にきわめて重要な「鍵層」となる。
【接続・地理】ジオパークとは
豆知識ですが、ユネスコの支援で推進されている「ジオパーク」という取り組みがあります。これは、その地域の地質学的な遺産(ジオサイト)を、保全・教育・観光に活かしていこうというものです。例えば、伊豆半島ジオパークでは、フィリピン海プレートが本州に衝突してできた、ダイナミックな火山の歴史を、糸魚川ジオパークでは、フォッサマグナの巨大な断層を、間近で体験することができます。ジオパークは、まさに大地の物語を体感できる「地球の公園」なのです。
受験対策まとめ
日本列島の成り立ちは、地図問題とセットで出題される!
- 日本周辺の4つのプレート(太平洋、フィリピン海、北米、ユーラシア)の名称と、おおよその位置関係を、図で描けるようにする。
- 「フォッサマグナ」と、その西縁である「糸魚川-静岡構造線」の位置と意味を覚える。
- 西南日本を内帯と外帯に分ける「中央構造線」と、外帯に見られる「帯状構造」が、「付加体」でできていることを理解する。
- 「カルデラ」が、巨大噴火による地面の「陥没」でできる地形であることを、噴火との因果関係で理解する。
練習問題
問1:本州中央部を南北に縦断し、日本の地質を東北日本と西南日本に大きく分ける地溝帯を何というか。
問2:西南日本の太平洋側に、古い地層(付加体)が帯状に配列している構造を何というか。
問3【論述】:日本列島で地震や火山活動が活発な理由を、「プレート」という語句を用いて、60字程度で説明しなさい。
解答と解説
問1の答え:フォッサマグナ
問2の答え:帯状構造
問3の解答例:
4つものプレートがひしめき合い、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む、地球上で最も活動的なプレートの境界に位置するため。(62字)