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地学②:固体地球としての地球の概観②
~地震波から探る地球の内側~

好奇心旺-盛なちさまる この記事で探究すること

地球の内部は、決して直接見ることはできない。でも、科学者たちは、その構造を驚くほどくわしく描き出している。その最大の功労者が、地球内部を駆けめぐる「地震波」だ。この単元では、地震波がどのように地球の内部構造を明らかにするのか、その伝わり方のルール「走時曲線」を読み解き、地球が層構造をなしている決定的な証拠を探究していくよ。

1. 地震波:地球内部を伝わる波

地震によって放出されたエネルギーは、性質の異なる波として地球内部を伝わっていく。これを実体波といい、主に2種類ある。

地震波の速さは、伝わる物質の密度や硬さによって変化する。一般に、深くなるほど速くなる傾向がある。また、性質が大きく異なる物質の境界では、屈折や反射を起こす。

2. 走時曲線と地球の層構造

地震波の到着時間(走時)と震源からの距離の関係を示した「走時曲線」を分析することで、地球内部に、地震波速度が不連続に変化する境界面が存在することがわかる。

これらの分析から、地球は大きく分けて地殻・マントル・核の3つの層からなり、核はさらに液体の外核と固体の内核に分かれるという、層構造モデルが確立された。

3. アイソスタシー:浮力で支えられる大地

地表に見られる巨大な山脈や、厚い氷床は、その重さでマントルの中に沈み込んでいるのだろうか? この問いに答えるのが「アイソスタシー(地殻均衡)」という考え方だ。

これは、比較的密度の小さい地殻が、より密度の大きいマントルの上に、まるで氷山が水に浮くように、浮力で浮かんでバランスを保っている、というモデルである。アイソスタシーによれば、標高が高い山脈の下では、その重さを支えるため、地殻がマントルの中に深く「根」を張り、地殻の厚さが平野部よりも厚くなっていると予測される。

分析中のコレクト コレクトの論理 de 解説:アイソスタシーと重力異常

アイソスタシーが成り立っている場合、地表の地形の凹凸は、地下の質量の過不足によって相殺されているはずです。これを重力測定の観点から検証します。

前単元で学んだ、地下構造の密度異常を反映する「ブーゲー異常」を考えてみましょう。もし、山脈が単純に地殻の上に余分な質量として乗っているだけならば、山脈の上では、大きな正のブーゲー異常が観測されるはずです。しかし、実際には、多くの山脈で、ブーゲー異常は大きな負の値を示します。

これは、観測者の足元にある山脈という「質量の過剰」よりも、そのさらに地下にある、マントルより密度の小さい地殻の「根」という「質量の欠損」の影響の方が、重力測定においてはるかに大きいことを意味しています。つまり、負のブーゲー異常の存在は、アイソスタシーが成立し、山脈の下に地殻の根が存在することの、極めて強力な物理的証拠なのです。

4. 地球内部の構成物質

地震波の速度や、地球全体の平均密度、そして、地球に飛来する隕石の化学組成などを総合的に分析することで、各層の構成物質が以下のように推定されている。

豆知識を話すコレクト 【研究】P波・S波以外の地震波

豆知識ですが、地震波には、地球内部を伝わる実体波(P波・S波)の他に、地球の表面だけを伝わっていく「表面波」が存在します。表面波は、実体波より速度が遅いですが、揺れの振幅が大きく、減衰しにくいため、震源から遠く離れた場所での大きな揺れや、長周期の揺れの主な原因となります。代表的なものに、ラブ波やレーリー波があります。

なるほど!と話すちさまる 受験対策まとめ

地震波は、地球内部を知るための唯一の「目」だ!

  1. P波とS波の基本的な性質の違い(縦波/横波、伝播媒体)を完璧に理解する。
  2. 走時曲線の分析から、地球内部に「不連続面」があることがわかる、という論理を理解する。
  3. 「シャドーゾーン」の存在が、マントルと核の境界の証拠であること、特にS波のシャドーゾーンが「外核が液体である」ことの決定的な証拠であることを説明できるようにする。
  4. 地殻・マントル・核の、それぞれの層の主な構成物質を覚える。(地殻=花こう岩/玄武岩、マントル=かんらん岩、核=鉄/ニッケル)

練習問題

【知識・計算問題】
問1:地殻とマントルの境界をなす不連続面の名称を答えなさい。
問2:ある地点の初期微動継続時間が20秒であった。P波の速さを8km/s、S波の速さを4km/sとすると、この地点から震源までの距離は何kmか。

【論述問題】
問3:ヒマラヤ山脈のような巨大な山脈の上で、重力測定から得られるブーゲー異常は、一般的に正の値と負の値のどちらを示すか。また、その理由を、「アイソスタシー」「密度」という語句を用いて、60字程度で説明しなさい。

解答と解説

問1の答え:モホロビチッチ不連続面(モホ面)

問2の答え:160km
【解説】震源距離をd[km]とすると、P波の到達時間 t_p = d/8, S波の到達時間 t_s = d/4。初期微動継続時間は t_s - t_p = 20 なので、d/4 - d/8 = 20。これを解くと d/8 = 20 となり、d = 160 [km]。

問3の解答例:
値:負の値。
理由:アイソスタシーが成立し、山脈の地下には、密度の大きいマントルより、密度の小さい地殻の「根」が広がっているため。(55字)