地学③:固体地球としての地球の概観③
~熱・地磁気から探る地球の内側~
この記事で探究すること
地球の中心部は、太陽の表面と同じくらい、約6000℃もの灼熱の世界だと言われている。この莫大な熱は、どこからやってきて、どうやって地表に伝わってくるんだろう? そして、地球が、まるで巨大な磁石のように「地磁気」を持っているのはなぜ? この単元では、地球内部の「熱」と「磁気」という、目に見えないエネルギーの流れを探究するよ。
1. 地球内部の熱源と温度分布
地球内部の熱には、大きく分けて2つの源がある。
- 地球形成時の熱:微惑星の衝突や、中心核が形成される際に解放された、地球誕生以来の「余熱」。
- 放射性元素の崩壊熱:地殻やマントルに含まれる、ウランやトリウム、カリウム40といった放射性同位体が、放射性崩壊する際に、常に生み出し続けている熱。
地球内部の温度は、深くなるほど高くなる。この温度勾配によって、熱は中心から地表へと伝わっていく。マントルでは、熱された物質が上昇し、冷えた物質が下降する「対流」によって、ゆっくりと熱が運ばれている。一方、固い地殻の中は、主に「伝導」によって熱が伝わる。
2. 地殻熱流量
地球の内部から、地表に向かって流れ出してくる熱の量を、単位面積・単位時間あたりで表したものが「地殻熱流量」だ。この値が大きい場所は、地下に熱源(マグマだまりなど)があったり、地殻が薄かったりすることを示す。
コレクトの論理 de 解説:地殻熱流量の分布
地殻熱流量の分布は、プレートテクトニクスと密接に関連しています。
- 大きい場所:新しいプレートが生まれ、高温のマントル物質が上昇してきている海嶺や、マグマ活動が活発な火山帯、沈み込み帯の島弧側で、大きな値を示します。
- 小さい場所:冷たく古いプレートが沈み込んでいる海溝や、地殻変動が少なく安定した、古い大陸(安定陸塊)で、小さな値を示します。
海洋全体の平均値と、大陸全体の平均値は、ほぼ等しくなっています。これは、海洋地殻は薄いが活動的で、大陸地殻は厚いが安定的であるという、熱的なバランスを示唆しています。
3. 地磁気とその3要素
地球が、それ自体巨大な磁石のように振る舞うことで生じる磁場を「地磁気」という。地磁気の成因は、液体の金属(鉄・ニッケル)でできた外核の対流運動(ダイナモ理論)だと考えられている。
ある地点での地磁気の向きと強さは、以下の3つの要素で表される。
- 偏角:方位磁針が指す磁北と、真の北(地理上の北極)との間の角度。
- 伏角:方位磁針を水平面内で自由に回転できるようにした場合に、N極が水平面からどれだけ傾くかの角度。赤道付近でほぼ0°、北磁極で+90°となる。
- 全磁力:地磁気の強さそのもの。
4. 地磁気の永年変化と残留磁気
地磁気は、決して不変ではない。数十年~数百年という時間スケールで、その強さや向きはゆっくりと変化している(永年変化)。
さらに、数万年~数百万年という、より長い時間スケールでは、N極とS極が逆転する「地磁気逆転」が、過去に何度も起きていたことがわかっている。この驚くべき事実は、岩石に残された、過去の地磁気の記録「残留磁気」の分析によって明らかになった。
【参考】玄武洞とチバニアン
豆知識ですが、地磁気の逆転が発見されたきっかけは、兵庫県の玄武洞の玄武岩でした。ここの岩石が、現在とは逆向きに磁化していることが、世界で初めて発見されたのです。
また、最近、地質年代の一つである「チバニアン」(約77.4万年前~12.9万年前)が、国際的に認定されました。これは、千葉県市原市の地層に、地球最後の地磁気逆転の痕跡が、世界で最も良好な状態で記録されていたことが、決定的な証拠となりました。日本の地層が、地球史の国際的な「ものさし」として認められた、画期的な出来事です。
受験対策まとめ
熱と地磁気は、プレートテクトニクスと密接に関連する重要テーマだ!
- 地殻熱流量が「大きい場所」と「小さい場所」を、プレートテクトニクスの観点から説明できるようにする。
「海嶺=大」「海溝=小」という対比は基本! - 地磁気の成因が「液体の外核の対流(ダイナモ理論)」であることを覚える。
S波が伝わらないことと、地磁気の存在は、ともに外核が液体金属であることを示す、強力な証拠だ。 - 偏角・伏角・全磁力の「地磁気の3要素」を区別する。
- 「地磁気逆転」と、その証拠となる「残留磁気」というキーワードを覚える。
チバニアンの認定と関連づけて理解しておこう。
練習問題
問1:海嶺や火山帯のように、地殻熱流量が大きい場所と、海溝や安定陸塊のように、小さい場所がある。このような違いが生じる最も大きな原因は何か。「プレート」という語句を用いて簡潔に説明しなさい。
問2:地磁気が発生する主な原因は、地球内部のどの部分が、どのような運動をすることだと考えられているか。
問3:過去の地磁気の向きや強さが、岩石の中に記録として残されているものを何というか。
解答と解説
問1の答えの例:プレートが生成される場所では地下の温度が高く、プレートが沈み込む場所では地下の温度が低いため。
問2の答え:
場所:外核
運動:対流
問3の答え:残留磁気