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地学㉔:地球と惑星の運動

好奇心旺盛なちさまる この記事で探究すること

「1日は24時間」「1年は365日」。わたしたちの生活の基本である「暦」は、天体の動きと、どう関係しているんだろう? そして、夜空をさまようように動く「惑星」たちの、一見複雑な動きの裏には、どんな美しい法則が隠されているんだろう? この単元では、地球の自転・公転から、ケプラーが見抜いた惑星運動の法則まで、天体の動きを支配する、宇宙の「ルール」を、数式を用いて解き明かしていくよ。

1. 地球の自転と公転

地球の運動は、日周運動や年周運動といった、天体の見かけの動きの根源となっている。

2. 惑星の視運動と会合周期

地球も惑星も、太陽のまわりを公転しているため、地球から見た惑星は、星座の間を、複雑に動いて見える(視運動)。特に、地球が内惑星を追い抜いたり、外惑星に追い抜かれたりする際に、惑星が天球上を逆戻りするように見える「逆行」という現象が起こる。

地球から見て、ある惑星が、再び太陽と同じ方向にくるまでの周期を「会合周期」という。惑星の公転周期と会合周期の間には、重要な関係式が成り立つ。

教材執筆中のコレクト コレクトの数理的アプローチ:会合周期の公式

地球の公転周期を E [年]、ある惑星の公転周期を P [年]、その惑星との会合周期を S [年]とします。天体の速さは、周期の逆数に比例すると考えられます。

【内惑星の場合(P < E)】
1年あたりに、内惑星が地球に対してどれだけ「追いつく」かの差は、\( (1/P - 1/E) \) と表せます。会合周期Sでちょうど1周差(360°)をつけるので、

\[ \frac{1}{S} = \frac{1}{P} - \frac{1}{E} \]

【外惑星の場合(P > E)】
1年あたりに、地球が外惑星に対してどれだけ「追いつく」かの差は、\( (1/E - 1/P) \) と表せます。

\[ \frac{1}{S} = \frac{1}{E} - \frac{1}{P} \]

考え中のちさまる 【例題】火星の公転周期

火星との会合周期が約2.2年であることがわかっている。地球の公転周期を1.0年として、火星の公転周期 P を求めなさい。

【解答プロセス】
火星は外惑星なので、公式 \( 1/S = 1/E - 1/P \) を使う。
\( S = 2.2 \)、\( E = 1.0 \) を代入すると、

\[ \frac{1}{2.2} = \frac{1}{1.0} - \frac{1}{P} \]
\[ \frac{1}{P} = 1 - \frac{1}{2.2} = \frac{2.2 - 1}{2.2} = \frac{1.2}{2.2} = \frac{6}{11} \]
したがって、\( P = 11/6 \approx 1.83 \) [年]
答え:約1.8年

3. ケプラーの法則

惑星の軌道運動は、17世紀初頭に、ケプラーによって、以下の3つの法則としてまとめられた。これは、天体の運動に関する、人類初の物理法則である。

教材執筆中のコレクト コレクトの数理的アプローチ:ケプラーの第3法則

ケプラーの第3法則は、以下の数式で表されます。

\[ \frac{P^2}{a^3} = k \quad (\text{一定}) \]
公転周期 P の単位を [年]、軌道半長径 a の単位を [天文単位, au] (太陽から地球までの平均距離)とすると、地球では P=1, a=1 なので、k=1 となります。したがって、太陽系のどの惑星についても、
\[ P^2 = a^3 \]
という、極めてシンプルな関係式が成り立ちます。これにより、公転周期がわかれば、その惑星の太陽からの平均距離を、逆に、平均距離がわかれば、公転周期を、正確に計算することができるのです。

なるほど!と話すちさまる 受験対策まとめ

天体の運動は、数式アレルギーを克服すれば、確実に得点源になる!

  1. 恒星日と太陽日の違いを、地球の自転と公転の図で説明できるようにする。
    太陽日は、公転する分だけ、恒星日より約4分長い。
  2. 会合周期の公式を、内惑星と外惑星で区別して、正しく使えるようにする。
    1年あたりの「角度の差」を考えるのが本質。(内惑星:1/S = 1/P - 1/E、外惑星:1/S = 1/E - 1/P)
  3. ケプラーの法則を、3つとも正確に説明できるようにする。
    第1法則(楕円軌道)、第2法則(面積速度一定→近日点で速い)、第3法則(\( P^2 = a^3 \))、それぞれの法則が、惑星の運動の「何を」記述しているのかを明確に。
  4. ケプラーの第3法則( \( P^2 = a^3 \) )を用いた計算問題は、絶対にマスターする。
    単位が「年」と「天文単位」であることに注意。

練習問題

【計算問題】
問1:ある小惑星の軌道半長径が 4 au であることがわかった。この小惑星の公転周期は何年か。
問2:金星の公転周期は約0.6年である。地球から見た金星の会合周期は何年か。小数第2位を四捨五入して答えなさい。

【論述問題】
問3:ある彗星が、非常に細長い楕円軌道で太陽のまわりを公転している。ケプラーの第2法則に基づくと、この彗星の速さは、その軌道上のどの位置で最大となり、どの位置で最小となるか。理由とともに説明しなさい。

解答と解説

問1の答え:8年
【解説】ケプラーの第3法則 \( P^2 = a^3 \) に、a = 4 を代入。\( P^2 = 4^3 = 64 \)。したがって、\( P = \sqrt{64} = 8 \) [年]。

問2の答え:約1.6年
【解説】金星は内惑星なので、\( 1/S = 1/P - 1/E \) を用いる。\( E=1.0 \), \( P=0.6 \) を代入。
\( 1/S = 1/0.6 - 1/1.0 = 10/6 - 1 = 4/6 = 2/3 \)。したがって、\( S = 3/2 = 1.5 \) [年]。 ※問題の有効数字を考慮すると、より正確には \(1/S = 1/0.62 - 1/1.00 \approx 1.61 - 1 = 0.61 \)。よって \(S \approx 1/0.61 \approx 1.64\)。→ 約1.6年

問3の解答例:
速さは、太陽に最も近い近日点で最大となり、最も遠い遠日点で最小となる。なぜなら、面積速度一定の法則により、太陽と彗星を結ぶ線分は、同じ時間に同じ面積を掃く必要があるため、距離が短いほど速く動く必要があるから。