地学⑫:地殻と生命の変遷
この記事で探究すること
地球の歴史は、ただ時間が流れただけじゃない。大地(地殻)の形が変わり、その上で生命が進化し、そして、進化した生命が、また大地や大気の環境を変えていく…。そんな、壮大な「共演」の物語なんだ。この単元では、プレート運動がいつ始まり、大陸がどのように成長してきたのか、そして、その大地の変動が、生命の歴史にどのような決定的な影響をあたえてきたのかを探究するよ。
1. プレート運動の開始と大陸地殻の形成
地球誕生直後の冥王代、地表はマグマオーシャンに覆われていた。やがて地表が冷え、海洋地殻のようなものができ始めるが、現在のような安定したプレート運動がいつ始まったのかは、まだ大きな謎だ。しかし、遅くとも約40億年前には、部分的なプレートの動きが始まり、最初の小さな大陸地殻が生まれたと考えられている。
大陸地殻は、主に花こう岩質の岩石でできており、海洋地殻(玄武岩質)よりも密度が小さい。そのため、一度できると、マントルの中に沈み込むことなく、地球の表面に「浮かび」続けることができる。これが、大陸が長い年月をかけて成長していくための、最も重要な性質だ。
2. 大陸の成長と超大陸の歴史
生まれたばかりの小さな大陸地殻は、プレート運動によって、互いに衝突・合体をくり返す。沈み込み帯では、付加体が形成されたり、マグマ活動によって新しい地殻が作られたりして、大陸は縁辺部から少しずつ面積を広げていった。これを大陸の成長という。
そして、地球の歴史上、これらの大陸が、数億年の時間をかけて一つにまとまり、巨大な「超大陸」を形成し、やがて再び分裂していく、というサイクルが、少なくとも3回はあったと考えられている。
コレクトの論理 de 解説:主要な超大陸
- ヌーナ(コロンビア)大陸:約18億年前に形成された、最初の本格的な超大陸と考えられている。
- ロディニア大陸:約11億年前に形成。この超大陸の分裂が、原生代後期の急激な環境変動(全球凍結など)の引き金になったという説がある。
- パンゲア大陸:古生代の終わりに形成され、中生代にかけて分裂を開始した、最も有名な超大陸。ウェゲナーが大陸移動説で提唱したもので、その存在は現在、確実視されている。
3. 地殻変動と生命の進化
大陸の離合集散は、地球の気候や、海水準、そして、生命の進化に、きわめて大きな影響をあたえてきた。
- 超大陸の分裂と生物の多様化:超大陸が分裂すると、大陸棚(浅い海)の面積が増え、また、大陸によって隔てられていた生物のグループが、独自の進化(固有化)を遂げるため、生物の多様性は増大する傾向がある。
- 大陸の衝突と大量絶滅:大陸どうしが衝突すると、それまで保たれてきた気候システムや、生態系が激変し、生物の大量絶滅の引き金となることがある。古生代の終わり、パンゲア大陸が形成された時期は、史上最大の大量絶滅が起きた時期と一致している。
- 酸素革命:約27億年前にシアノバクテリアが登場し、光合成を開始。大気中に酸素が蓄積し始めると、海水に溶けていた鉄イオンと反応し、膨大な量の酸化鉄を海底に沈殿させた。これが、現在の鉄鉱床の大部分を占める「縞状鉄鉱層」である。大気の化学組成の変化が、地層に明確な記録を残した、生命と地球の相互作用の最大の証拠だ。
受験対策まとめ
大陸と生命の歴史は、大きな流れをつかむことが重要だ!
- 大陸地殻が、海洋地殻よりも「密度が小さい」ため、沈み込まずに成長していく、という基本原理を理解する。
- 地球史において、「超大陸」の形成と分裂がくり返されてきたことを知る。
特に、古生代末に形成された「パンゲア大陸」の名前は必須。 - 大陸の分裂が「生物の多様化」を、大陸の衝突が「大量絶滅」を、それぞれ引き起こす可能性がある、という関係性を理解する。
- 先カンブリア時代の「縞状鉄鉱層」の形成が、シアノバクテリアの光合成による「酸素の増加」と、海水中の「鉄イオン」の反応によるものであることを、化学的な視点から説明できるようにする。
練習問題
問1:古生代末に形成され、中生代に分裂を開始した超大陸の名前を答えなさい。
問2:先カンブリア時代に形成された、鉄鉱床として重要な、酸化鉄を多く含む堆積岩を何というか。
問3【論述】:超大陸が分裂すると、生物の多様性が増大する傾向がある。その理由を、「海岸線」「大陸棚」「隔離」という3つの語句をすべて用いて、55字程度で説明しなさい。
解答と解説
問1の答え:パンゲア大陸
問2の答え:縞状鉄鉱層
問3の解答例:
大陸の海岸線が複雑になり、生物の生息域となる浅い大陸棚の面積が増えると共に、大陸間の生物が地理的に隔離されるため。(57字)