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地学⑯:大気圏

好奇心旺盛なちさまる この記事で探究すること

わたしたちが「空」とよんでいる、この透明な空間。それは、地球をうすいベールのように取り巻く、窒素や酸素からなる「大気圏」だ。この単元では、大気の基本的な組成と、高度によって気温が劇的に変化する「大気の層構造」の物理的な理由を探究する。そして、日々の天気予報が、地上から宇宙まで、どのような最新技術で大気を観測し、作られているのか、その舞台裏にせまるよ。

1. 大気の組成と気圧

地表付近の乾燥した空気は、体積比で、約78%の窒素(N₂)、約21%の酸素(O₂)、約1%のアルゴン(Ar)からなる。地球温暖化で注目される二酸化炭素(CO₂)は、約0.04%と、ごく微量だが、温室効果に大きな役割を果たしている。

空気の重さによって生じる圧力を「気圧」という。気圧は、上空へ行くほど、その上にある空気の量が減るため、指数関数的に減少する。地上の1気圧(約1013hPa)に対し、高度約5.5kmで約1/2気圧、高度約16kmでは約1/10気圧にまで低下する。

2. 大気圏の層構造

大気圏は、高度による温度変化にもとづいて、下から順に「対流圏」「成層圏」「中間圏」「熱圏」の4つの層に区分される。

分析中のコレクト コレクトの論理 de 解説:各層の特徴
  • 対流圏(高度0~約11km):上空ほど気温が低下する。原因は、地面からの放射熱で下から暖められているため。空気の対流が活発で、雲や雨などの気象現象は全てこの層で起こる
  • 成層圏(約11~50km):上空ほど気温が上昇する。原因は、この層に存在するオゾン層が、太陽からの紫外線を吸収して大気を加熱するため。大気が非常に安定している。
  • 中間圏(約50~80km):上空ほど気温が再び低下する。オゾン層から離れ、加熱源がなくなるため。大気圏で最も低温(約-90℃)に達する。
  • 熱圏(約80km~):上空ほど気温が急激に上昇する。太陽からのX線や紫外線を直接吸収するため、温度は1000℃以上に達する。ただし、空気が極めて希薄なため、熱くは感じない。

3. 大気の観測

正確な天気予報のためには、地表から超高層まで、大気の状態を立体的に把握する必要がある。

これらの膨大な観測データを、スーパーコンピュータに入力し、物理法則に基づいたシミュレーション(数値予報)を行うことで、未来の天気が予測されている。予報官は、この数値予報の結果を、地形の効果などを考慮して解釈・修正し、最終的な予報を発表する。

豆知識を話すコレクト コレクトの発展ラボ:高層天気図

豆知識ですが、天気予報では、地上の天気図だけでなく、上空の気圧の様子を示した「高層天気図」が極めて重要です。例えば、「500hPa高層天気図」は、気圧が500hPaになる高度(約5500m)の分布を示したものです。この高度の等高線は、上空の風の流れ(偏西風など)をほぼ表しており、気圧の谷(等高線が南にへこんだ部分)が近づくと、地上では低気圧が発達し、天気が崩れる、といった対応関係があります。上空の大気の流れが、地上の天気を支配しているのです。

なるほど!と話すちさまる 受験対策まとめ

大気圏の構造は、温度変化の「なぜ?」が問われる!

  1. 大気の主成分(窒素、酸素)の体積比(約4:1)を覚える。
  2. 大気圏の4つの層(対流圏、成層圏、中間圏、熱圏)を、下から順番に完璧に覚える。
  3. 各層の「温度変化の傾向(上昇/低下)」と、その「物理的な理由」をセットで説明できるようにする。
    (例:「成層圏で気温が上昇するのは、オゾン層が紫外線を吸収して加熱するため」)
  4. 3つの観測方法(地上、高層、衛星)の、それぞれの名称と、主な役割を理解する。
    特に、高層観測で用いる「ラジオゾンデ」は頻出。